孔子は、人間に生まれつきの大きな差などないと説いた。
人は誰もが似たような本性(性質・可能性)を持って生まれてくる。
だが、生まれてからの学び方、習慣、努力の積み重ねによって、
やがては埋められないほどの差が生まれるのだ。
努力を惜しまず学ぶ者と、何もせずに過ごす者。
その違いこそが、後の人間性、教養、人格、行動力に大きな影響を与える。
「才能がないからできない」のではない。
「学ばなかったからできない」のだ。
【原文引用(ふりがな付き)】
「子(し)曰(い)わく、性(せい)、相(あい)近(ちか)し。習(なら)いて相(あい)遠(とお)し。」
【現代語訳・主旨】
人は、生まれつきの性質(本性)はそれほど違わない。
しかし、生まれてからどんな習慣を身につけ、どんな学びをしてきたかで、
やがて大きな違いが生まれる。
【注釈】
- 「性(せい)」:人が生まれつき持っている基本的な性質や資質。
- 「相近し(あいちかし)」:互いにあまり差がないこと。
- 「習う(ならう)」:繰り返しの訓練や学習。習慣や環境も含む。
- 「相遠し(あいとおし)」:だんだん大きく異なってくること。
※この言葉は、近代教育思想にも影響を与え、「努力と環境が人を作る」という普遍的な価値観を裏付けています。
原文:
子曰、性相近也、習相遠也。
書き下し文:
子(し)曰(いわ)く、性(せい)は相(あい)近(ちか)し、習(なら)いて相(あい)遠(とお)し。
現代語訳(逐語/一文ずつ訳):
- 「性は相近し」
→ 人間の生まれつきの性質(本性)は、誰もがほとんど同じである。 - 「習いて相遠し」
→ しかし、学び・環境・経験によって、その性質はだんだんと異なっていく。
用語解説:
- 性(せい):人間の生まれつきの本性。天性・気質とも。
- 相近し(あいちかし):互いに似ている、差がない。
- 習う(ならう):学習する、習慣を身につける。ここでは「後天的な環境や教育」全般を指す。
- 相遠し(あいとおし):互いに大きく違ってくる、離れていく。
全体の現代語訳(まとめ):
孔子はこう言った:
「人間は、生まれつきの性質においては皆似たようなものである。しかし、育った環境や学んだことによって、その差はどんどん広がっていくのだ。」
解釈と現代的意義:
この一節は、人間の本性と後天的な教育・経験の重要性を鋭く示しています。
- **「人は生まれながらにして平等」**という思想に近く、スタートラインの差よりも、その後の「習い・環境・努力」がいかに人を形づくるかを語っています。
- 儒家思想の根幹である「学びによる人格の形成」や「教育の力」を、わずか一文で表現した名言です。
ビジネスにおける解釈と適用:
「才能の差より、学びと環境が人をつくる」
- 新人の能力差は実は小さい。育成・経験・上司の指導によって人材は大きく変わる。
- だからこそ、人材育成に投資すべき。学びの文化が組織の実力を決める。
「学びを止める者は、やがて“遠い人”となる」
- 常に学び続ける者は成長し続けるが、怠る者は取り残される。
- 同じ入社年でも、努力を続ける人とそうでない人では、数年で大きな差が生まれる。
「組織文化は“習い”の集積である」
- 社風や行動規範は後天的な習慣の積み重ねで形成される。
- よい習慣(フィードバック文化、挑戦、誠実さ)を組織に根付かせることで、人材も組織も良くなっていく。
ビジネス用心得タイトル:
「才能より環境、性より習──“学びの習慣”が人と組織の未来を分ける」
この章句は、「人間は変われる」という強いメッセージを持ち、教育・育成・自己改革の可能性を広く示唆しています。
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