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人は人によって育てられる――学ぶに値する人が、己を磨く鏡となる

よき師、よき友に囲まれてこそ、君子は磨かれる

孔子は、弟子の子賤(しせん)を評して「まさしく君子である」と称えた。
そのうえで、彼がそのような立派な人物に育った背景には、「魯の国に君子たちがいたからだ」と語った。
つまり、学ぶに値する師や良き仲間、徳のある人物たちに囲まれ、刺激を受ける環境こそが、人を高めるのだと。
「もしそのような人たちがいなかったとしたら、彼はどこからその立派さを学んだのか」という問いかけは、
人の成長における“環境の重要性”を、孔子が強く意識していた証である。
どんなに素質があっても、一人で高みに至ることはできない。
学び合う仲間、見習う人物、それらがあってこそ、人格は育つのである。


原文とふりがな付き引用

子(し)、子賤(しせん)を謂(い)う。君子(くんし)なるかな、若(し)き人。
魯(ろ)に君子なる者無(な)くんば、斯(こ)の斯(これ)を焉(いず)くにか取(と)らん。

君子が育つには、君子に学ぶ環境がいる。
人は人に触れて、育てられるのだ。


注釈

  • 子賤(しせん)…孔子の晩年の高弟のひとり。本名は冉求。才知と実行力を兼ねた人物とされる。
  • 君子なるかな…人格者である、本当に立派な人物だという最大級の称賛。
  • 魯に君子なる者無くんば…もしこの地に手本となる人物がいなかったとしたら。
  • 斯れ焉にか斯を取らん…「彼は一体どこで(その徳を)学んだというのか?」という反語表現。
目次

1. 原文

子謂子賤、「君子哉若人。魯無君子者、斯焉取斯。」


2. 書き下し文

子(し)、子賤(しせん)を謂(い)いて曰(いわ)く、
「君子(くんし)なるかな、若(し)き人。魯(ろ)に君子なる者無(な)くんば、斯(こ)れ焉(いず)くんぞ斯(こ)の人を取(と)らんや。」


3. 現代語訳(逐語・一文ずつ訳)

「子謂子賤、君子哉若人」

→ 孔子は子賤について言った。「あの若者は本当に立派な人物だ(=君子だ)」

「魯無君子者、斯焉取斯」

→ 「もし魯国に君子がいなければ、どうして彼のような人物が現れるだろうか(いや、現れるはずがない)」


4. 用語解説

  • 子賤(しせん):孔子の弟子の一人。本名は宰予(さいよ)。政治・行政において優れた能力を発揮した人物。
  • 君子(くんし):道徳的に優れた人格者。単に身分が高いという意味ではなく、徳を備えた理想的人間。
  • 若人(しひと)/若き人:「この人」「このような若者」といった意。
  • 魯(ろ):孔子の故国(現在の山東省南部)。
  • 斯(こ)れ焉にか斯を取らん:「どうしてこのような人物を得ることができたのか(できるはずがない)」という反語表現。

5. 全体の現代語訳(まとめ)

孔子は子賤について次のように語った:
「あの若者はまことに立派な人物だ。もしこの魯国に君子が一人もいないのであれば、どうしてそのような人物が生まれ育つことがあろうか。」


6. 解釈と現代的意義

この章句では、**「優れた人物の存在は、見えないところに優れた支え手や文化がある証拠だ」**という孔子の思想がうかがえます。

  • 優秀な人材は、単独で成り立つのではなく、環境・師・仲間に支えられている。
  • 若者(子賤)の成長を見て、背後にある「君子たる者の存在(=優れた文化や教育)」を読み取る孔子の洞察力。

これは、“一人の成果や行動の背後には、必ず育んだ土壌がある”という視点であり、現代でも通用する教育・組織論の根幹です。


7. ビジネスにおける解釈と適用

「優秀な人材は、優れた文化と土壌から生まれる」

たった一人のスター社員を見て「偶然の逸材」と考えるのではなく、その背後にある組織文化・教育制度・先輩の導きなどに目を向けるべき。

→ 成果主義だけではなく、“育成と文化”に投資する組織こそ、持続可能な成長を遂げる。

「若手の活躍は、組織の成熟度を映す鏡」

若い社員が堂々と活躍しているなら、それはリーダー層が支援し、安心して挑戦できる環境を作っている証拠である。

→ 若手を見るときは“その人”だけでなく、“その人を育てた組織”を評価する視点を持つこと。


8. ビジネス用の心得タイトル

「逸材は、育つ土壌に宿る──若手の成長は組織文化の証」


ご希望があれば、子賤の他のエピソードや、「若手育成」や「組織文化の可視化」をテーマにした研修資料やケーススタディ化も可能です。

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