孔子は、「三人で行動すれば、必ずその中に自分の師とすべき人がいる」と語った。
それは、誰かが善い行いをしていれば、それを素直に見習い、
誰かが誤ったふるまいをしていれば、それを鏡として自分の中にも同じ欠点がないかを省みるという意味である。
つまり、他人の姿を通して、自分自身の行動と心を常に調整し、正していくことができる。
他人を批判するためではなく、自分をよりよくするために人を見るという、謙虚な学びの姿勢がこの教えの核にある。
原文・ふりがな付き引用
子(し)曰(い)わく、三人(さんにん)行(おこな)えば、必(かなら)ず我(わ)が師(し)有(あ)り。
其(そ)の善(よ)き者(もの)を択(えら)びて之(これ)に従(したが)い、其の善(よ)からざる者にして之を改(あらた)む。
注釈
- 三人行えば … たとえ3人の中でもという意。少人数でも十分に学べるという例示。
- 我が師有り … 自分の学ぶべき対象(師)は必ず見つかるという信念。
- 善き者を択びて従う … よい行いは積極的に真似し、自分の行動に取り入れる。
- 善からざる者にして之を改む … 他人の過ちを見て、自分もそうなっていないかと省みて改める。
1. 原文
子曰、我三人行、必有我師焉。擇其善者而從之、其不善者而改之。
2. 書き下し文
子(し)曰(い)わく、三人(さんにん)行(とも)に行(ゆ)けば、必(かなら)ず我(わ)が師(し)有(あ)り。
其(そ)の善(よ)き者を択(えら)びて之(これ)に従(したが)い、其の善(よ)からざる者を以(もっ)て之を改(あらた)む。
3. 現代語訳(逐語/一文ずつ訳)
- 「三人行えば、必ず我が師有り」
→ 三人で道を行けば、必ず自分の学ぶべき点を持つ人がその中にいる。 - 「その善き者を択びてこれに従い」
→ よい行いをしている人を見て、その善を学び、実践する。 - 「その善からざる者をもってこれを改む」
→ よくないところをしている人を見て、自分に同じ欠点があれば改める。
4. 用語解説
- 三人行(さんにんゆけば):三人でともに道を歩む。特別な三人ではなく、どんな人間関係においてもという一般性を表す。
- 師(し):師匠、学ぶべき対象。ここでは「他人の中にある自分の教師となるべき姿」の意。
- 善者(ぜんしゃ):道徳的に正しく、学ぶべき行動・言動・姿勢を持つ人。
- 従う(したがう):それに倣い、実践する。
- 改む(あらたむ):自分の欠点を修正する、自省する。
5. 全体の現代語訳(まとめ)
孔子はこう言いました:
「三人で道を行けば、その中には必ず私にとっての師がいる。
そのうち、善い行いをしている者の点は見習い、善くない行いをしている者の点は、
自分の中に同じものがないかを反省し、改めるようにしている。」
6. 解釈と現代的意義
この章句は、他者すべてを“学びの対象”として見る謙虚で主体的な姿勢を孔子が語ったものです。
- 「全ての人は、自分に何かを教えてくれる存在である」
- 「善悪を問わず、他人の行動から自己改善の材料を得る」
- 「“人を見て自分を磨く”という道徳的内省の技法」
これは自己成長と人間関係の成熟を支える最良の心構えといえます。
7. ビジネスにおける解釈と適用
■「すべての人が“学びの源”」
──上司、部下、顧客、ライバル──誰からでも学ぶ姿勢を持つ人が、柔軟かつ謙虚に成長できる。
■「良い点は真似る、悪い点は反省材料に」
──「他人の悪口を言う」のではなく、「自分はどうか?」と問い直す姿勢が、人間力と信頼を育む。
■「反面教師も師である」
──問題行動や非効率な言動も、“自分が同じことをしていないか”と省みる材料になる。
■「謙虚な観察が、最強の学習戦略」
──“知っている人から学ぶ”だけでなく、“誰からでも学ぶ”ことで、成長のチャンスを逃さない人材になれる。
8. ビジネス用心得タイトル
「誰からでも学べ──“人を見て我が身を磨く”姿勢が成長を導く」
この章句は、人材育成・チームビルディング・リーダー育成において極めて重要な学びの心構えを示しています。
他者を評価するのではなく、他者を鏡にして自己を高める──まさに現代にも通じる自己修養の道です。
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