学びを確かにしてからこそ、世に出る価値がある
孔子は弟子・漆雕開(しつちょうかい)に仕官(公の職に就くこと)を勧めた。
しかし漆雕開は、「まだ自分にはその任にふさわしいだけの確信がない」と辞退した。
この返答を聞いた孔子は、たいそう喜んだという。
自分の力を過信せず、まずは十分に学び、人格と実力が整ってから世に出ようとする姿勢――それこそが、君子の慎みと誠実さである。
学びと実践の間には時間が必要であり、学びを軽んじては真の実力者にはなれない。
孔子が喜んだのは、漆雕開の謙虚さと、学びへの真摯な姿勢を見たからである。
原文とふりがな付き引用
子(し)、漆雕開(しつちょうかい)をして仕(つか)えしめんとする。
対(こた)えて曰(いわ)く、吾(われ)は斯(これ)を之(これ)未(いま)だ信(しん)ずる能(あた)わず、と。
子、説(よろこ)ぶ。
力が伴っていないのに急いで事をなせば、かえって誤る。
まずは自らを確かなものにせよ――それが本当の「学びの完成」である。
注釈
- 漆雕開(しつちょうかい)…孔子の弟子の一人。学問を重んじ、実践には慎重な姿勢を示した人物。
- 仕(つか)う…仕官、公の職務に就くこと。
- 信ずる能わず…自信がない、任に足るとまだ思えないという謙虚な心。
- 説ぶ(よろこぶ)…孔子が心から喜んだこと。言葉ではなく態度・志に対する評価。
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