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■引用原文(日本語訳)
「激質と暗質を圧倒した時、純質が優勢となる。激質は純質と暗質を、暗質は純質と激質を〔それぞれ圧倒した時、優勢となる。〕」
(第14章 第10節)
■逐語訳
純質(サットヴァ)は、激質(ラジャス)と暗質(タマス)を克服したときに、優勢となる。激質は、純質と暗質を圧倒すれば優勢となり、同様に、暗質もまた、他の二つを押さえたときに主導権を握る。
■用語解説
- 純質(sattva):知性・明晰・平穏・調和をもたらす性質。
- 激質(rajas):活動・欲望・情熱・行為を引き起こす性質。
- 暗質(tamas):無知・怠惰・混乱・停滞をもたらす性質。
- 圧倒(abhibhavati):他の要素を打ち消す・支配する・主導権を取る。
- 優勢(pravartate):心や行動の主導的な性向として現れること。
■全体の現代語訳(まとめ)
人の心には、純質・激質・暗質という三つの性質が常にせめぎ合っており、どれかが他を圧倒したとき、それが主導権を握るようになる。静かに明晰でいる時には純質が、熱く動き続けている時には激質が、何も考えず停滞している時には暗質が優勢となっている。
■解釈と現代的意義
この節は、私たちの内面が「常にどの性質の影響下にあるか」を知ることの重要性を説いています。外からは同じ行動に見えても、それが純質(明確な目的・平穏)から来ているのか、激質(焦りや執着)からか、あるいは暗質(無関心や回避)からかで、その意味も結果も大きく異なります。
つまり、「何に突き動かされて行動しているか」を内省することが、自分を支配する力を見極め、変えていく鍵なのです。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
内的主導性の把握 | 「忙しくしているが成果がない」のは激質に振り回されている証拠。「面倒だから放置」は暗質の支配。意識的に純質(明晰・冷静)に切り替える習慣が必要。 |
リーダーシップの質 | リーダーがどの性質で組織を引っ張っているかで、文化が変わる。純質的リーダー:静かで明快。激質的リーダー:攻撃的で熱狂的。暗質的リーダー:責任回避・曖昧。 |
戦略の転換点 | 短期的な行動(激質)を続けて疲弊したとき、あえて静けさ(純質)に立ち返ることで、中長期戦略のバランスを取り戻せる。 |
個人のコンディション管理 | 朝のぼんやり(暗質)、日中の焦り(激質)、夜の静かな内省(純質)など、時間帯による性質の変化を理解し、スケジュールや意思決定に活かすこともできる。 |
■心得まとめ
「いま、自分を動かしているのはどの性質か?」
人は、何かに突き動かされている時、それが純質か激質か暗質かに気づかないことが多い。しかし、その主導権を見極め、意図して切り替えることができる者こそが、自らの成長と環境への影響力をコントロールできるリーダーである。
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