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■引用原文(日本語訳)
修行者の行をおこなう人は、自分の心を退けるべきではない。
(そうでないならば)くりかえし心が沈んでしまって、諸の(乱れた)思いのままになってしまうであろう。
―『ダンマパダ』第11章 第7偈
■逐語訳
- 修行者の行をおこなう人は(samaṇadhammaṁ carato):修道者としての道(教えの実践)を歩む者は、
- 自分の心を退けるべきではない(attānaṁ nātimaññeyya):自分自身の心を見捨てたり、侮ったりしてはならない。
- くりかえし心が沈んでしまって(bhiyyo hīyetha attano):そのようにしていると、心はますます退化し、弱ってしまう。
- 諸の思いのままになってしまう(cittaṁ dummanasaṁ yathā):心は不機嫌になり、煩悩や迷妄のままに流される。
■用語解説
- 心を退ける(attānaṁ nātimaññeyya):自己否定・放棄・軽視を意味する。精神修養において自分自身の内面を見捨ててしまうこと。
- 沈む(hīyetha):活力を失い、精神が落ち込み、向上心を欠いていくこと。
- 乱れた思い(dummanasaṁ):怒り・不安・執着・妄想など、心の不調和を引き起こす思念。
■全体の現代語訳(まとめ)
仏陀は「修行をする者は、自分自身の心をなおざりにしてはならない」と教えています。心を軽んじて放置すれば、その心は次第に弱まり、混乱した思念に引きずられてしまう。精神の自己管理ができなければ、修行の成果も得られないという教訓です。
■解釈と現代的意義
この偈は「自己との関係性の大切さ」を説いています。現代においても、自己否定や過剰なセルフコントロールの失敗が、メンタル不調や意欲喪失の原因となります。「心を置き去りにした努力」は、持続せず、歪みを生むのです。だからこそ、「自分自身の心を大切にし、方向づける」ことが、成長や修行の基盤になります。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 現代ビジネスでの適用例 |
---|---|
メンタルマネジメント | プレッシャーの中で心を放置すると、燃え尽きや無気力に繋がる。定期的に心の状態を点検することが必要。 |
自己認識と継続力 | スキルや成果を追い求めるだけでなく、「自分がどう感じているか」「本当に向かいたい方向は何か」を見つめ直すことで継続力が増す。 |
チームリーダーの姿勢 | 部下に対しても「心の置き場」を尊重する姿勢を持つと、信頼と安定した関係が築ける。 |
自己否定からの脱却 | 失敗や遅れが続いたときに「自分なんて」と心を放棄すると、再起の機会を見失う。内省しつつも自己尊重を忘れないことが重要。 |
■心得まとめ
「自分の心を見捨てるな。道はそこから始まる」
仏陀は、修行をする者は自らの心を粗末に扱ってはならないと説きました。
目標ばかりを追い、自分の内面を軽視することは、かえって心の混乱を招きます。
ビジネスの世界においても、精神的自己管理と自己受容が、成長と継続の鍵を握っているのです。
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