― 正しく導き、混乱を避ける知恵が必要
孔子は、人を治め導く際の根本姿勢について語った。
「民(たみ)=人々」に行動させることはできるが、
そのすべてを理解させる必要はない。むしろ、それは難しく、
不用意に情報を与えることで混乱を招く恐れもある。
これは知識を与えずに従わせろという支配的な思想ではなく、
情報の伝え方やタイミング、信頼関係が極めて重要だという、
リーダーとしての慎重な姿勢を求める教えである。
民が信頼し、安心して従えるようにするには、
説明よりも信頼される行動と姿勢が鍵となる。
それが、組織や社会を円滑に動かす知恵なのだ。
原文と読み下し
子(し)曰(のたま)わく、民(たみ)は之(これ)に由(よ)らしむべく、之を知らしむべからず。
注釈
- 由らしむ(よらしむ):導き、従わせる意。納得のうえで動いてもらうこと。
- 知らしむべからず:すべてを教えることはできない、あるいはしてはならないという意味。単に「隠す」ことではなく、「必要以上の情報が混乱を招くこともある」との慎重な視点。
- この句には誤読が生じやすく、時代によって「愚民政策」と曲解されたこともあるが、孔子本来の意図は組織運営における“信頼”と“適切な情報提供”のバランスを説いていると読むのが自然。
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