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正しき者を上に立てよ ― 人は誠実な者にこそ従う

人を導くには、まずその上に立つ人物が誠実であり、正しいことが重要である。

正直でまっすぐな者を登用し、歪んだ者の上に置くならば、人々は自然とその人に従い、秩序も生まれる。

反対に、誠実さを欠く者や私利私欲に走る者を上に立て、まっとうな者をその下に置けば、誰も心から従おうとはしない。組織や社会の健全さは、人を選ぶ基準にすべてがかかっている。

人を動かしたければ、まず人を見る目を持て。信を得るのは、地位ではなく、徳と才にほかならない。

誰を上に据えるか──人事の正義が、組織の信頼を決める。

目次

原文

「哀公問曰、何為則民服。孔子對曰、舉直錯諸枉、則民服。舉枉錯諸直、則民不服。」

書き下し文

「哀公(あいこう)、問いて曰(いわ)く、何を為(な)さば則(すなわ)ち民(たみ)服(ふく)せん。孔子(こうし)、対(こた)えて曰く、直(なお)きを挙(あ)げて、諸(これ)を枉(ま)がれるに錯(お)けば、則ち民服す。枉れるを挙げて、諸を直きに錯けば、則ち民服せず。」

現代語訳(逐語/一文ずつ訳)

  1. 「哀公、問いて曰く、何を為さば則ち民服せん」
     → 魯の君主・哀公が孔子に尋ねた。「どうすれば民(国民・庶民)は従順になるのか?」
  2. 「孔子、対えて曰く」
     → 孔子は次のように答えた。
  3. 「直きを挙げて、諸を枉れるに錯けば、則ち民服す」
     → 正直で正しい人を抜擢して、不正な人の上に据えれば、民は納得して従うようになる。
  4. 「枉れるを挙げて、諸を直きに錯けば、則ち民服せず」
     → 反対に、不正な者を登用し、正直な者の上に置けば、民は従わなくなる。

用語解説

  • 哀公(あいこう):魯国の君主。孔子に政治を問うた人物。
  • 民服(たみふく):民が心から納得して従うこと。
  • 直き(なおき):正直者、公正な人。
  • 枉れる(まがれる):不正直な人、ゆがんだ人物。
  • 挙げる(あげる):登用する、推薦する。
  • 錯く(おく):位置づける、配置する。つまり、どこに置くかという意味。

全体の現代語訳(まとめ)

魯の哀公が「どうすれば民は納得して従うようになりますか」と尋ねた。
孔子は答えた:「正しい人を登用し、不正な人の上に据えれば、民は自然に従うようになります。
反対に、不正な人を抜擢して正直者の上に置けば、民は納得せず従わなくなるでしょう。」

解釈と現代的意義

この章句は、人事の公平さと、正直者の登用が組織と社会の信頼を決めるという、非常に本質的な原則を示しています。

  • 民(=市民・社員)は、「誰が上に立っているか」をよく見ている。
  • 組織の信頼は、制度ではなく登用の倫理=人事判断の妥当性によって築かれる。
  • 正しい人を上に置くことが、“道徳の実践”であり、“統治の基礎”であるという孔子の政治哲学が凝縮された章句です。

ビジネスにおける解釈と適用

  1. 「リーダー選びは“公正”と“人格”が鍵」
    • 部門長・プロジェクトリーダーなどの登用では、スキルだけでなく**“誠実さ・公正さ・信頼性”**を基準に選ぶことが、組織の納得感を生む。
    • 不正な人物が昇進すれば、「あの人が上になるなら、私は頑張る意味がない」となり、モチベーション低下や離職の原因になる。
  2. 「見ているのは“誰が昇進したか”ではなく、“どういう人が評価されるか”」
    • 昇進基準が曖昧だと、組織の価値観が不明確になる。
       → 透明性と説明責任のある人事が組織文化を強化する。
  3. 「信頼は“公平な登用”からしか生まれない」
    • 組織改革やモチベーション向上を図るなら、まずは人事の公正さを疑われないものにすることが最優先

まとめ

この章句は、マネジメント・ガバナンス・組織文化の核心を突く孔子の統治観を端的に示したものです。

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