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■原文
アルジュナは言った:
「動不動の諸物の世界にとって、あなたは父である。
あなたは敬わるべきであり、最上の尊師である。
三界において、あなたに等しい者はなく、いわんや勝る者は他にいない。
無比の力を持つ方よ。」
(第11章 第43節)
■逐語訳(一文ずつ)
- 動不動の諸物の世界にとって、あなたは父である。
→ この宇宙に存在するすべての動くもの・動かぬものにとって、あなたは創造者であり、守護者である。 - あなたは敬わるべきであり、最上の尊師である。
→ あなたは尊敬されるべき存在であり、最も高い導師(師)である。 - 三界において、あなたに等しい者はなく、いわんや勝る者は他にいない。
→ 天界・地上界・冥界のいずれにも、あなたと等しい存在はなく、ましてやそれ以上の者はいない。 - 無比の力を持つ方よ。
→ あなたの力は比べるものがなく、絶対的である。
■用語解説
- 動不動の諸物(チャラーチャラナーム):動く生命(動物など)と動かぬ物体(山、石など)、すべての存在。
- 父(ピタ):創造と庇護の象徴。
- 三界(トリ・ローカ):天界(神々の世界)、地上界(人間の世界)、冥界(死者の世界)。
- 尊師(グル):精神的な導師、師匠。
- 無比の力(アプリティマ・プラバーウァ):比較不能な力、絶対的な威力。
■全体の現代語訳(まとめ)
この宇宙のあらゆるもの——動くものも動かないものも——にとって、あなたは父であり、守護者であり、創造主です。
あなたは最大限に尊敬されるべき存在であり、あらゆる師の中で最も高い尊師です。
三つの世界を見渡しても、あなたと並ぶ者はいませんし、あなたに勝る者など到底存在しません。
あなたは比類なき、圧倒的な力を持っておられます。
■解釈と現代的意義
この節は、絶対的な存在に対する認識と敬意の表明です。
アルジュナはここで、クリシュナ(神)を単なる導き手ではなく、この世の根源的存在として捉え直しているのです。
特に注目すべきは、神を「父」と呼ぶことで、愛と保護の象徴としての神性も描かれている点です。
これは、指導・支配だけでなく、包容力や責任も含むリーダー像といえます。
■ビジネスにおける解釈と適用
- 真のリーダーは、「父」であり「師」である。
→ 部下にとっては保護者であり、また指導者でもある存在であるべき。 - 無比の信頼は、敬意と実力から生まれる。
→ 尊敬は肩書きではなく、人格と力の総合的な信頼によって築かれる。 - 上に立つ者ほど、自らを律し、自覚する。
→ 他に並ぶものがない存在であるならば、その責任もまた無比である。
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