孟子は、人を導くにはまず自らが明らかでなければならないと説く。
賢者とは、自らの「昭昭(しょうしょう)=明らかな徳」をもって人々を照らし、導くことができる存在である。
しかし、現在の為政者たちは、自らが「昏昏(こんこん)=徳もなく暗愚」であるにもかかわらず、
その暗さのままで人に徳を持たせようとしている。
孟子はこの態度を厳しく批判し、それでは人は決して感化されず、善に向かって変わることもないと断じる。
この教えは、**「徳は上から下へと伝わる」**という儒教の根本原理の一つであり、
人を変えたいなら、まず自分自身が変わらなければならないという極めて実践的な指針でもある。
つまり、言葉や命令ではなく、「徳の光」で人を照らすことが真のリーダーシップであり、
それがなければ、どんな正論も虚しく響くばかりだ。
引用(ふりがな付き)
「孟子(もうし)曰(いわ)く、賢者(けんじゃ)は其(そ)の昭昭(しょうしょう)を以(もっ)て、人(ひと)をして昭昭たらしむ。今(いま)は其の昏昏(こんこん)を以て、人を昭昭たらしめんとす」
注釈
- 昭昭(しょうしょう)…明るくはっきりしていること。ここでは「高潔な徳」のこと。
- 昏昏(こんこん)…暗くぼんやりしているさま。ここでは「徳のない状態」「無明」「愚かさ」を指す。
- 使人昭昭たらしむ…人に明徳を持たせる、立派に育てようとする。
- 今は其の昏昏を以て~…今の為政者は、自らに徳がないまま他人を正そうとするという批判。
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