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■引用原文(日本語訳)
知慧乏しき愚かな人々は放逸にふける。しかし心ある人は、最上の財宝をまもるように、つとめ励むのをまもる。
(『ダンマパダ』第2章「はげみ」第26偈)
■逐語訳
- 智慧に欠ける愚かな者たちは、放逸(怠惰)に身をゆだねる。
- しかし、洞察ある思慮深い人は、
- 最も大切な財宝を守るように、
- 精進(努力・気づき)を守り、大切にし、育てる。
■用語解説
- 知慧乏しき(アッパンニャー):智慧の欠如。物事の本質を見極める力が不足している状態。
- 愚かな人々(バーラ):仏教における「愚か者」は、単に知識が少ない人ではなく、真理に背を向けて生きる者。
- 放逸(パマーダ):無自覚、怠惰、注意散漫な生き方。仏教では最も避けるべき状態の一つ。
- 心ある人(パンディター):思慮ある者、真理を尊び自らを律する者。
- つとめ励む(アッパマーダ):注意深く、たゆまず努力を重ねること。
- 最上の財宝(ラタンムタマン):最も価値あるものの比喩であり、ここでは「精進」や「正しい気づき」を意味する。
- まもる(ラッカティ):守る、保持する、尊重し続けるという行為。
■全体の現代語訳(まとめ)
智慧のない愚かな人々は、自己を律することもなく、怠惰に流されて生きる。しかし、思慮ある人は、精進という最も大切な「宝物」を守るように、日々の努力を大切にし続ける――この偈はそう説いています。
ここでいう「守る」とは、単なる継続ではなく、意識的に大切にする姿勢を指しています。
■解釈と現代的意義
この偈は、「精進は宝である」という人生観を私たちに教えてくれます。多くの人が怠けることを「楽」だと誤解し、努力を「苦」と見なしますが、仏教ではむしろ逆です。
日々、意識的に生き、努力を積むことこそが、人生に真の充実と価値をもたらす――それは宝を持つ者がそれを守るように、自らの中にある努力の火を灯し続ける姿なのです。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
日常業務への姿勢 | ルーティンに流されず、日々の努力と気づきを意識的に大切にできる人が成長し続ける。 |
自律性 | 周囲が怠惰なムードにあっても、自らの価値観に従い精進を守れる人は、ブレずに評価される。 |
人材評価 | 長期的には、派手な成果よりも「努力を継続する能力」が信頼と成果につながる。 |
経営視点 | 組織の文化として、精進を「資産」として守る姿勢を持つことで、持続的成長が可能になる。 |
■心得まとめ
「精進は、磨けば光る宝である。愚はそれを捨て、賢はそれを守る」
努力し続ける姿勢は、即座に報われるものではないかもしれません。
しかし、それを「宝のように守る人」は、いつか確かな信頼と成果を手にします。
流されず、自らの“宝”を持ち続ける――その姿こそ、賢者の証です。
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