贅沢に慣れてしまえば、どれほどの財産があっても「満足」には至らない。
それでは、つつましく暮らしながらも、心にゆとりを持って生きる人に劣ってしまう。
能力がある人ほど、多くの労を重ね、かえって周囲の妬みや怨みを買いやすい。
それならば、才に乏しくとも気ままに暮らし、自然体のまま自己を全うする人のほうが、
むしろ充実した人生を送っているといえるのではないだろうか。
足りないことを恐れるより、足りていることに気づく。
人より優れていることに固執するより、自分らしく生きることを選ぶ。
その姿勢が、真に「富む」ということの意味を教えてくれる。
原文とふりがな付き引用
奢(おご)る者(もの)は富(と)みて而(しか)も足(た)らず。何(なん)ぞ倹(けん)なる者(もの)の貧(まず)しくして而(しか)も余(あま)り有(あ)るに如(し)かん。
能(のう)ある者(もの)は労(ろう)して而(しか)も怨(うら)みを府(たくわ)う。何(なん)ぞ拙(せつ)なる者(もの)の逸(いつ)にして而(しか)も真(しん)を全(まっと)うするに如(し)かん。
注釈(簡潔に)
- 奢(おご)る者:贅沢を好む人。財を多く持っていても欲が尽きない。
- 倹なる者:質素につつましく暮らす人。少ないもので満足する心を持つ。
- 怨みを府(たくわ)う:人の妬みや恨みを集めること。
- 拙なる者:才能に乏しい人。だが気楽に生きている。
- 真(しん)を全うする:自分らしさ・自然な本性を保って生きること。
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