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足るを知る人こそ、真に豊かで自由に生きる

贅沢に慣れてしまえば、どれほどの財産があっても「満足」には至らない。
それでは、つつましく暮らしながらも、心にゆとりを持って生きる人に劣ってしまう。

能力がある人ほど、多くの労を重ね、かえって周囲の妬みや怨みを買いやすい。
それならば、才に乏しくとも気ままに暮らし、自然体のまま自己を全うする人のほうが、
むしろ充実した人生を送っているといえるのではないだろうか。

足りないことを恐れるより、足りていることに気づく。
人より優れていることに固執するより、自分らしく生きることを選ぶ。
その姿勢が、真に「富む」ということの意味を教えてくれる。


原文とふりがな付き引用

奢(おご)る者(もの)は富(と)みて而(しか)も足(た)らず。何(なん)ぞ倹(けん)なる者(もの)の貧(まず)しくして而(しか)も余(あま)り有(あ)るに如(し)かん。
能(のう)ある者(もの)は労(ろう)して而(しか)も怨(うら)みを府(たくわ)う。何(なん)ぞ拙(せつ)なる者(もの)の逸(いつ)にして而(しか)も真(しん)を全(まっと)うするに如(し)かん。


注釈(簡潔に)

  • 奢(おご)る者:贅沢を好む人。財を多く持っていても欲が尽きない。
  • 倹なる者:質素につつましく暮らす人。少ないもので満足する心を持つ。
  • 怨みを府(たくわ)う:人の妬みや恨みを集めること。
  • 拙なる者:才能に乏しい人。だが気楽に生きている。
  • 真(しん)を全うする:自分らしさ・自然な本性を保って生きること。

1. 原文

奢者富而不足。何如儉者貧而有餘。能者勞而府怨。何如拙者逸而全眞。


2. 書き下し文

奢(おご)る者は富みて而(しか)も足(た)らず。何ぞ倹(けん)なる者の貧にして而も余り有るに如(し)かん。
能(のう)ある者は労(ろう)して而も怨(うら)みを府(た)く。何ぞ拙(せつ)なる者の逸(いつ)にして而も真(しん)を全(まっと)うするに如かん。


3. 現代語訳(逐語/一文ずつ訳す)

  • 奢者富而不足。
     → 奢(ぜいたく)な人は、財産があっても満足しない。
  • 何如儉者貧而有餘。
     → それなら、倹約する人のほうが、たとえ貧しくても心にゆとりがあるぶん勝っているのではないか。
  • 能者勞而府怨。
     → 才能ある人は多くの労をとり、結果として周囲からの妬みや不満を抱え込みやすい。
  • 何如拙者逸而全眞。
     → それなら、不器用な人でも、気楽に過ごしながら自分らしさ(真)を保つほうがよいのではないか。

4. 用語解説

  • 奢者(しゃしゃ):ぜいたくな生活をする人、物質的欲望が強い人。
  • 儉者(けんしゃ):質素でつつましい暮らしを守る人。
  • 府怨(ふえん):怨みを蓄えること。人の嫉妬・不満・非難が集まる状態。
  • 拙者(せっしゃ):不器用な人、能力の劣る人。ここでは「謙虚で表に出ない人」の意。
  • 逸(いつ):気楽でゆったりとした生き方。
  • 全眞(ぜんしん):自分本来の自然な姿や純粋な心を保つこと。

5. 全体の現代語訳(まとめ)

ぜいたくな人は富んでいても満たされることがなく、倹約する人は貧しくても心に余裕がある。
また、才能ある人は多く働くぶん他人の妬みや不満を招きがちだが、不器用な人でも気ままに過ごして自分らしさを保っている方がむしろ幸せかもしれない。


6. 解釈と現代的意義

この章句は、「真の幸福とは何か」を問いかけます。

物質的に豊かで才能があっても、それが内面的な満足や人間関係の調和につながるとは限りません。むしろ、質素で欲が少なく、無理をしない生き方の方が、心の平安と本来の自分らしさを守ることができるのです。

つまり、「社会的成功」や「能力の高さ」だけを価値基準とせず、地味でも自然体で生きることに美徳があるとする人生哲学です。


7. ビジネスにおける解釈と適用(個別解説付き)

▪ 過度な欲は「満足感」を奪う

昇進・報酬・成果を求めること自体は悪ではないが、「さらに、さらに」となると、いつまでも充足しない状態に陥る。倹約・節度ある働き方が、精神的な豊かさにつながる。

▪ ハイパフォーマーは妬まれやすい

成果を上げる人ほど、知らず知らずのうちに他人の嫉妬や反発を集めることもある。能力と人間関係のバランス感覚が重要。

▪ “不器用でも自然体”は強み

無理に目立たず、等身大で働く姿勢は、長期的な信頼を得る。結果を焦らず、正直に・淡々と積み重ねることで、周囲からの評価がついてくる。

▪ 組織も「逸と眞」の余白を許容せよ

常に効率や成果を求め続けると、人は磨耗する。「能力を使い切る」よりも「余白を残す」ほうが、真の創造性や健康的な継続性を生む。


8. ビジネス用の心得タイトル

「足るを知る力、見えぬ真価を守る力──飾らぬ倹と拙に、ほんものが宿る」


この章句は、「表面的な豊かさ」や「能力の高さ」ではなく、満足を知る心・自然体であること・誠実に生きる姿勢こそが、真の幸福と信頼を築く鍵であることを教えてくれます。



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