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情けは巡って、自分の福となる

この世を上手に生きていくには、他人に一歩譲る心が大切である。
一見、後退に見えるその一歩が、実は自分が先に進むための土台となる。
また、人に対して完全を求めず、少し寛大な心を持って接することが、
結果として自分の人生を豊かにしてくれる。
人を利することは、遠回りのようでいて、実は自分自身を利する最も確かな基礎なのである。
「情けは人のためならず」とは、まさにこのこと。


「世(よ)に処(しょ)するに一歩(いっぽ)を譲(ゆず)るを高(たか)しと為(な)す。
歩(ほ)を退(しりぞ)くは即(すなわ)ち歩を進(すす)むるの張本(ちょうほん)なり。
人(ひと)を待(ま)つに一分(いちぶん)を寛(ひろ)くするは是(これ)れ福(ふく)なり。
人を利(り)するは実(じつ)に己(おのれ)を利するの根基(こんき)なり。」


注釈:

  • 世に処する(よにしょする)…社会で生きていくこと、人と関わって日常を送ること。
  • 譲るを高しと為す…譲り合いこそが尊い態度であるという価値観。
  • 張本(ちょうほん)…物事の出発点、原因。ここでは「譲ることが進歩の原点になる」という意味。
  • 人を待つに一分を寛くする…他人に対しては多少の不足や欠点を受け入れ、寛大に接する。
  • 根基(こんき)…人生や成功の基礎。善意の行為が、将来の自己の豊かさにつながる土台となる。

1. 原文:

處世讓一步爲高、退步卽進步之張本。
待人寬一分是福、利人實利己之根基。


2. 書き下し文:

世に処するに、一歩を譲るを高しと為す。
歩を退くは、即ち歩を進むるの張本(ちょうほん)なり。
人を待つに、一分を寛くするは是れ福なり。
人を利するは、実に己を利するの根基(こんき)なり。


3. 現代語訳(逐語/一文ずつ):

  • 「世に処するに、一歩を譲るを高しと為す」
     → 世の中で立ち振る舞うにあたり、自分が一歩譲ることこそ、最も高尚な態度である。
  • 「歩を退くは、即ち歩を進むるの張本なり」
     → 一歩退くことは、実は一歩進むための土台・始まりである。
  • 「人を待つに、一分を寛くするは是れ福なり」
     → 他人を受け入れるときには、心を少し広く持つことで、それが自分にとっての幸福につながる。
  • 「人を利するは、実に己を利するの根基なり」
     → 他人の利益をはかることは、実は自分自身の利益の根本になる。

4. 用語解説:

  • 處世(しょせい):社会の中での立ち振る舞い、処世術。
  • 讓一步(じょういっぽ):一歩譲ること、他者に道を譲る姿勢。
  • 張本(ちょうほん):根拠・土台・出発点のこと。
  • 待人(たにん):他人に接すること、他者への対応。
  • 根基(こんき):基盤・根本・土台。

5. 全体の現代語訳(まとめ):

社会の中で人と関わるときは、自分が一歩譲ることこそが最も高い生き方である。
一見退いているように見えても、それは前に進むための準備である。
また、他人に対して少しでも寛大な心を持てば、それが巡って自分に幸福をもたらす。
そして、他人に利益を与えることは、結局は自分にとっても最大の利益となるのである。


6. 解釈と現代的意義:

この章句は、「譲ること・寛容であること・利他性を持つこと」が、実は自己の成長や幸福につながるという深い哲理を含んでいます。

現代社会では、自己主張や競争が重視されがちですが、
長期的に人望や信頼を築くには、「一歩譲る」「相手の立場に立つ」「人に尽くす」ことの価値が見直されています。

短期的には損のように見えても、長い目で見れば、それが信頼や人脈、機会を生む「張本(=出発点)」なのです。


7. ビジネスにおける解釈と適用(個別解説付き):

  • 「交渉・会議では“先に譲る”が主導権を握る鍵」
     譲ることで相手の信頼を得て、むしろ主導的立場を築くという逆説的なリーダーシップがある。
  • 「部下や顧客に“もう一歩”寛容になることが信頼の源」
     小さな遅れやミスに対して寛容であれば、心理的安全性が高まり、良いチーム文化が形成される。
  • 「利他的な行動は長期的な自己利益を生む」
     クライアントに“自社の利益を超えて貢献する”ことで、強固な関係とリピートビジネスを得られる。
     利他は利己の戦略的手段である。

8. ビジネス用の心得タイトル:

「一歩譲って信を得、他者を利して己を立てよ──“退いて進む”の極意」


この章句は、東洋的な「柔の強さ」「利他の実利」を端的に表す、非常に実践的かつ深い教訓です。

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