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一念のやさしさが、未来の世を清らかにする

たとえ小さなものであっても――
私たち一人ひとりの、ほんのひとかけらの誠実さや思いやり(慈祥)は、この世の中になごやかな空気をゆっくりと醸し出していく。

そして、心の奥底にあるたった一寸(いっすん)の潔白な思いは、
百代(ひゃくだい)――つまり、未来の遥か遠くの時代にまでも、清らかでかぐわしい香りとして、確かに伝え残されていく。

これは、自分一人の心がけで世界を変えるなどというおごりではない。
むしろ、一人の静かな善意が、時代と時代をつなぎ、人々の心に風のように届いていく――そう信じる希望の思想である。

新渡戸稲造も『武士道』の最後において、まさにこの条を思わせる表現で、日本人の精神が「香り」として未来へ届くことを願っている。
姿が見えなくなっても、香りは残る。言葉が消えても、徳は伝わる。


原文(ふりがな付き)

「一念(いちねん)の慈祥(じしょう)、以(もっ)て両閒(りょうかん)の和気(わき)を醞醸(うんじょう)すべく、
寸心(すんしん)の潔白(けっぱく)、以て百代(ひゃくだい)の清芬(せいふん)を昭垂(しょうすい)すべし。」


注釈

  • 慈祥(じしょう):誠実でやさしい思いやりの心。愛と徳に満ちた気持ち。
  • 醞醸(うんじょう):自然に醸し出すこと。時間をかけて育まれる雰囲気や影響。
  • 寸心(すんしん):ほんのわずかの心、微細な内面の気持ち。
  • 清芬(せいふん):清らかでかぐわしい香り。徳や善意の象徴的比喩。
  • 昭垂(しょうすい):明らかに伝え残すこと。後世に影響を及ぼすこと。

パーマリンク候補(英語スラッグ)

  • a-kind-heart-lasts-forever(優しき心は永く残る)
  • quiet-virtue-shapes-the-future(静かな徳が未来をつくる)
  • fragrance-of-goodness(善意の香り)

この条は、今この瞬間の心のあり方が、遥か未来の世界を育てていくという、壮大で美しい思想を伝えています。
「見返りではなく、香りを残す」――そのような生き方をそっと後押ししてくれる、優しく力強いメッセージです。

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