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もてなしは“その人のためだけ”に用意された誠意のかたち


目次

一、原文と逐語現代語訳

原文:

客人の取持には、座敷、器物まで新しく、わざと用意して、初めてその客にひらくが馳走なり。

現代語訳(一文ずつ):

  • 客人をもてなす際には、部屋のしつらえや器に至るまで新しく用意して、
  • その人のために初めて使うのが、真の“ご馳走”である。

二、用語解説と詳細

用語意味現代的文脈
座敷・器物客を迎える空間や食器・調度品接客空間の設計、会議室や応接間の整え方
張り替える障子などを新しくすること清潔さ・新鮮さの象徴
手拭、柄杓、枕、煙管、灰吹き手洗い用品、寝具、喫煙具等細部への配慮や習慣への気遣い
当座漬けその時だけの特別な漬物特別オーダーや季節限定の演出として活用可

三、全体の現代語訳(まとめ)

客人をもてなすとは、表面だけの応対ではなく、座敷のしつらえや道具類にいたるまで新しく用意し、「その人のためだけ」に初めて使う、という心をこめたものである。それこそが“ご馳走”というものの本質である。

障子を張り替え、手拭いや柄杓を新調し、枕や喫煙具などを整える。料理の品にも、その人のためだけに仕立てた特別な一品を加える──例えば当座漬けのように。

これは、ある数寄者(風流を愛する達人)から聞いた話である。


四、解釈と現代的意義

この章は「見えない気遣いこそ最高のもてなし」という美学を説いています。

  • 接待とは単なる形式ではない。相手に「この日のために用意された」と感じさせることで真意が伝わる。
  • 心を込めた“準備”が、もっとも雄弁に“敬意”を語る。
  • 手間を惜しまぬ“誠意の演出”が、相手との信頼関係を築く土台になる。

五、ビジネスにおける応用

シーン実践ポイント
商談・接待会議室のセッティングを普段と変え、相手の好みに合わせたお茶や軽食を用意
来客対応名刺入れや茶器、椅子配置などにその人の「ためだけ」の意匠を加える
プレゼンや資料作成テンプレートを使い回さず、相手の業種・関心に合った“特別仕様”で組み立てる
社内歓迎会や送別会食事や演出に「個別の背景・人柄に寄り添った要素」を盛り込む

六、まとめと心得

「もてなしとは、準備の中に宿る愛である」

接待やサービスにおいてもっとも重要なのは、**「どれだけ特別感を感じさせられるか」です。
それは豪華さではなく、「その人のために」と思わせる
“心の手間”**に他なりません。

この葉隠の教えは、ホスピタリティ産業や営業・接客業だけでなく、日常的な人間関係の礼節にも通用する不変の道です。


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