—— 言葉も人も、真価を見極める目を持て
孔子は、人を評価する際の基本的な姿勢をこう語った。
「君子は、立派な言葉を語ったからといって、それだけでその人を抜擢するようなことはしない。
また、人格や地位が劣っているからといって、その人の言葉に耳を傾けないということもしない」と。
つまり、君子は言葉だけで人を判断せず、人だけで言葉を切り捨てもしない。
見た目や印象、地位や背景にとらわれず、“中身”を見ることが本物の判断力であるという教えである。
知識のある者は、偏見をもたず、
一つの言葉にも価値を見出し、人の全体像にも正しく目を向ける。
その態度こそ、君子の公平さと見識の深さをあらわす。
原文とふりがな
「子(し)曰(い)わく、君子(くんし)は言(げん)を以(もっ)て人(ひと)を挙(あ)げず、
人(ひと)を以(もっ)て言(げん)を廃(す)てず」
注釈
- 「言を以て人を挙げず」:美しい・立派な言葉だけに惑わされて、その人物を評価・登用しない。
- 「人を以て言を廃せず」:その人の評価や地位、過去にとらわれて、語られた内容を無視したり軽んじたりしない。
- この言葉は、見かけや先入観ではなく、真実の価値を見極めるための姿勢を説いている。
パーマリンク候補(英語スラッグ)
judge-by-substance
(本質で判断せよ)not-words-or-status
(言葉でも地位でもなく)discern-value-beyond-appearance
(外見を超えて価値を見抜け)
この章句は、現代社会での採用・評価・リーダーシップにも通じる教訓です。
表面的な印象や地位ではなく、その人の真の価値を見抜く目を持つこと。
それが、信頼される人物・組織の土台となるのです。
1. 原文
子曰、君子不以言擧人、不以人廢言。
2. 書き下し文
子(し)曰(いわ)く、君子(くんし)は、言(げん)を以(もっ)て人(ひと)を挙(あ)げず、人を以て言を廃(はい)せず。
3. 現代語訳(逐語/一文ずつ)
- 「子曰く、君子は言を以て人を挙げず」
→ 孔子は言った:「君子は、その人の発した言葉だけを根拠にして、人物全体を評価して登用したりはしない」。 - 「人を以て言を廃せず」
→ 「また、その人の評判や出自を理由に、その人の言葉そのものを無視したりもしない」。
4. 用語解説
- 君子(くんし):人格と判断力を備えた理想的な人物。公平・誠実・深い見識を持つ。
- 言(げん):その人の発言・発信された言葉や意見。
- 挙(あ)ぐ:推挙する、推薦する、登用する。
- 廃(はい)す:退ける、無視する、顧みない。
5. 全体の現代語訳(まとめ)
孔子はこう言った:
「君子たる者は、発言だけで人を評価・登用せず、
また、ある人物の評判や身分によって、その人の言葉を退けることもしない」。
6. 解釈と現代的意義
この章句は、「評価における公平性・客観性・内容重視」を強調した、孔子の判断倫理を端的に示しています。
- 「言葉の巧みさ=実力」ではない。内容と行動を見るべき。
- 逆に、「あの人は嫌いだから」と言って、その人の発言内容まで否定するのは、知性的な態度ではない。
- 真に徳ある君子とは、人と意見を切り離して冷静に判断できる人物である。
7. ビジネスにおける解釈と適用
◆ 「スピーチ上手 ≠ 実力者」
言葉巧みなプレゼンや会議での発言だけで、実務能力を評価するのは危険。行動・成果・人間性の総合で判断せよ。
◆ 「嫌いな人の中にも、正しい意見はある」
意見の正しさは、その人の好き嫌いと関係ない。「人を見て言を見ず」は非論理的判断のもとになる。
◆ 「先入観を排し、“言”と“人”を分けよ」
採用・評価・会議などあらゆる意思決定の場で、“発言の中身”を冷静に見極める姿勢が必要。
◆ 「本当に公平な人は、意見に耳を傾ける幅が広い」
部下・若手・異分野の人間からの提言でも、中身が正しければ受け入れる度量が、信頼される上司の条件。
8. ビジネス用心得タイトル
「言で人を決めず、人で言を捨てず──公平な評価が信頼を築く」
この章句は、判断における冷静さ・公平さ・誠実さの重要性を端的に伝えています。
採用、人材評価、リーダーシップ、意思決定プロセスの改善など、あらゆるビジネス領域において実用性の高い教訓です。
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