真剣に物事に取り組み、苦心しながら歩む日々の中には、必ず小さくとも確かな喜びが隠れている。
努力を重ねる中で得られる達成感、困難を乗り越えた後に見える風景、それらは一時の快楽とは比べものにならない深い悦びをもたらしてくれる。
反対に、物事がうまく進んでいるとき、人はつい油断し、傲慢になりがちである。
その「得意のとき」の中には、すでに将来の「失意の種」が潜んでいる。
成功や順調さを喜ぶことは自然だが、それを過信すれば、いずれは失望の痛みへとつながってしまう。
本当の悦びは、楽な道の先にはない。
誠実に悩み、苦しみ、向き合った末にこそ、心の底から湧き上がるものなのだ。
原文とふりがな付き引用
苦心(くしん)の中(なか)に、常(つね)に心(こころ)を悦(よろこ)ばしむるの趣(おもむき)を得(え)たり。
得意(とくい)の時(とき)に、便(すなわ)ち失意(しつい)の悲(かな)しみを生(しょう)ず。
注釈(簡潔に)
- 苦心(くしん):心身を尽くして努力すること。悩みながらも真剣に取り組むこと。
- 悦ばしむるの趣(よろこばしむるのおもむき):心を自然に喜ばせてくれる味わいや感覚。深い充実感。
- 得意(とくい):物事が思い通りに進んでいる状態。順調さや成功。
- 便ち(すなわち):すぐに、あるいはその中にすでに。
- 失意の悲しみ:期待が裏切られたときの落胆。得意の背後に潜む反動。
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