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欲望より、自分に克つことを楽しめ

世の中の多くの人は、欲望を満たすことを楽しみとし、それが人生の喜びであると考える。しかし、欲望はしばしば思うように満たされず、満たされたとしてもさらに新たな欲望を生み、結果として苦しみを引き寄せる。

これに対して、道に達した立派な人は、「心に逆らうこと」――すなわち、自分の欲に打ち克つこと――をこそ楽しみとする。なぜなら、そこには精神の向上があり、真の充足があるからだ。たとえ苦しみを伴うことであっても、それを超えたときに得られる喜びは、欲望を満たすだけの快楽よりも遥かに深く、豊かである。

自分に克つことを喜びとする者こそ、人生を最も豊かに楽しむ者といえるだろう。


原文と読み下し

世人(せじん)は心(こころ)の肯(うべな)う処(ところ)を以(もっ)て楽(たの)しみと為(な)し、却(かえ)って楽心(らくしん)に引(ひ)かれて苦処(くしょ)に在(あ)り。
士(し)は心(こころ)の拂(そむ)く処(ところ)を以(もっ)て楽(たの)しみと為(な)し、終(つい)に苦心(くしん)の為(ため)に楽(たの)しみを換(か)え得(う)る来(きた)り。


注釈

  • 心の肯う(うべなう):心の欲するままにすること。欲望に従うこと。
  • 心の払る(そむく):自分の欲望に背くこと。自己克服を意味する。
  • 士(し):ここでは「達士」、すなわち道理に達した立派な人物。
  • 楽心に引かれて苦処に在り:快楽を追い求めた結果、かえって苦しみに陥ること。
  • 苦心の為に楽を換え得来たる:努力や自己克服によって、やがて真の喜びを得ること。
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