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幸せは、少し譲ることで深まる

細く狭い道を通るとき、混雑していれば、自分が一歩よけて人に道を譲る。
おいしいものを分け合うとき、自分の取り分を少し減らして他人に譲る。
このようなささやかな「思いやり」の積み重ねが、
人生を安らかで幸せなものにしていく。
自分の幸福だけを追い求めるのではなく、誰かに分け与える――
それが、真に満ち足りた人生を送るための、最も安楽な道である。


「径路(けいろ)の窄(せま)き処(ところ)は、一歩(いっぽ)を留(とど)めて人(ひと)の行(ゆ)くに与(あた)え、
滋味(じみ)の濃(こ)やかなる的(もの)は、三分(さんぶん)を減(へ)らして人の嗜(たしな)むに譲(ゆず)る。
此(こ)れは是(これ)れ世(よ)を渉(わた)る一(いち)の極(きょく)安楽(あんらく)の法(ほう)なり。」


注釈:

  • 径路(けいろ)…細い道、小道。人と人がすれ違う場面を象徴する言葉。
  • 窄き処(せまきところ)…人がぶつかりやすい、譲り合いが必要な場面。
  • 滋味(じみ)…おいしさ、美味。特別な楽しみや満足の象徴。
  • 三分を減らす…自分の取り分を少し減らして、他人に与える思いやり。
  • 極安楽の法(きょくあんらくのほう)…最も安らかで幸福な生き方の方法、心の在り方。
目次

『菜根譚』より

1. 原文:

徑路窄處、留一步與人行。
滋味濃者、減三分讓人嗜。
此是涉世一極安樂法。


2. 書き下し文:

径路(けいろ)の窄(せま)き処(ところ)は、一歩を留めて人の行くに与え、
滋味(じみ)濃やかなる者は、三分を減じて人の嗜(この)むに譲る。
此れは是れ、世を渉(わた)る一の極安楽の法なり。


3. 現代語訳(逐語/一文ずつ):

  • 「径路の窄き処は、一歩を留めて人の行くに与え」
     → 道が狭くてすれ違いにくい場所では、自分が一歩譲って、相手に道を譲る。
  • 「滋味濃やかなる者は、三分を減じて人の嗜むに譲る」
     → 味わい深く濃厚なものは、自分の取り分を三割ほど減らして、他人にも楽しんでもらう。
  • 「此れは是れ、世を渉る一の極安楽の法なり」
     → これは、人生を渡るうえで非常に心安らかに生きられる最上の方法のひとつである。

4. 用語解説:

  • 径路(けいろ):道、人生における進路・行動の比喩。
  • 窄き処(せまきところ):物理的に狭い場所、あるいは利害や立場がぶつかる場面。
  • 滋味(じみ):深く味わいのあるもの、美味なもの、転じて人生の喜びや豊かさ。
  • 嗜む(このむ):味わって楽しむ、好んで受け取る。
  • 極安楽の法(ごくあんらくのほう):非常に心が安らかで円満に生きるための秘訣・処世術。

5. 全体の現代語訳(まとめ):

道が狭いときには、自分が一歩譲って他人に通ってもらう。
味わい深く貴重なものは、自分だけで楽しまずに、少し減らして他人にも分ける。
こうしたささやかな譲り合いこそが、人生を穏やかで心地よく渡っていくための、最高の生き方である。


6. 解釈と現代的意義:

この章句は、**「譲ることこそが、もっとも安らかに生きる知恵」**だと説いています。

  • 譲れば対立がなくなる。
  • 分ければ恨みが生まれない。
  • 他人の満足が、自分の満足にもつながる。

こうした価値観は、現代において「エゴを抑え、共に心地よく生きる術」として、むしろ一層重要です。
競争と自己主張の激しい現代社会において、**“譲りの文化”**を実践する人間こそが、本当の意味での“勝者”となり得ます。


7. ビジネスにおける解釈と適用(個別解説付き):

  • 「一歩譲ることで、信頼と協調が生まれる」
     会議や交渉で意見がぶつかったとき、譲歩する姿勢が全体の調和を保つ。
     それが逆に、相手の尊敬を得て、長期的な関係性を築く。
  • 「利益のすべてを自分で取らない」
     成果や報酬を他者と分け合うことが、チームの士気と持続的成功につながる。
     「三分減らす」は、“絶妙な譲歩”の象徴。
  • 「“譲る技術”が、職場の空気を変える」
     譲り合いの文化がある職場は、摩擦が減り、生産性も幸福度も高まる。
     これは、リーダー自身が実践することでチーム全体に波及する。

8. ビジネス用の心得タイトル:

「譲って得る安心、分けて生む信頼──“一歩の余白”が人間関係を潤す」


この章句は、日常の中の小さな“ゆずり”こそが、究極の処世術であり、幸せの鍵であることを教えてくれます。


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