孔子は、学びや仕事への向き合い方について、次のように語った。
「あることを“知っている”者は、それを“好きな”者には及ばない。
そして、それを“好きな”者は、それを“楽しんでいる”者には及ばない。」
これは、知識や技術の深まりには、感情の関わりが極めて重要であるという教えだ。
知識は、努力で身につけられる。
しかし、「好き」という感情が伴えば、自ら進んで学ぶようになり、理解がさらに深まる。
そして何より、「楽しむ」心を持った人は、学びや仕事の中に喜びを見いだし、困難さえも遊びのように受け入れられる。
つまり、楽しんで取り組んでいる人こそが、最も強く、最も伸びる。
才能の差よりも、気持ちの在り方が成長を大きく左右する――
それが孔子の伝える、このシンプルながら深い真理である。
ふりがな付き原文
子(し)曰(いわ)く、
之(これ)を知(し)る者は、之を好(この)む者に如(し)かず。
之を好む者は、之を楽(たの)しむ者に如かず。
注釈
- 知る者:理解している人。知識や技能として知っている段階。
- 好む者:興味を持ち、積極的に関わる人。好きという感情がある。
- 楽しむ者:心からその行為を面白く感じ、喜びとして取り組む人。主体的かつ創造的。
1. 原文
子曰、知之者不如好之者、好之者不如樂之者。
2. 書き下し文
子(し)曰(いわ)く、之(これ)を知(し)る者は、之を好(この)む者に如(し)かず。
之を好む者は、之を楽しむ者に如かず。
3. 現代語訳(逐語/一文ずつ訳)
- 子曰く、之を知る者は、之を好む者に如かず。
→ 孔子は言った。「物事を知っている者は、それを好む者には及ばない。」 - 之を好む者は、之を楽しむ者に如かず。
→ 「それを好んでいる者も、それを心から楽しんでいる者には及ばない。」
4. 用語解説
- 知る者(しるもの):知識を持ち、理解している人。理性で物事を捉える人。
- 好む者(このむもの):関心を持ち、情熱を傾ける人。意欲・愛着を持って取り組む人。
- 楽しむ者(たのしむもの):心から喜びとして取り組む人。自発的・内発的動機で取り組む人。
- 如かず(しかず):及ばない、劣る。
5. 全体の現代語訳(まとめ)
孔子はこう言った。
「ある物事を理解しているだけの人は、それを心から好きになっている人には及ばない。
そして、それを好きなだけの人も、それを心から楽しんでいる人には及ばない。」
6. 解釈と現代的意義
この章句は、「学び・仕事・技術に対する関わり方の深さ」によって、人の力量は大きく異なるという真理を説いています。
- 単なる“理解”では限界がある。
- “好き”という感情が加わると、より深い探求・継続的努力が可能になる。
- しかしさらに、“楽しんでいる状態”にある者こそが、創造的で自在な境地に至る。
孔子は、学びや仕事において最も重要なのは、**「義務感」ではなく「喜びと情熱」**だと捉えていたことがわかります。
7. ビジネスにおける解釈と適用
● 「知識よりも熱意、熱意よりも楽しむ力が成果を決める」
- 仕事を**“できる”人より、“好きでやっている”人の方が成果が大きく、成長も速い**。
- さらに、“心から楽しんでいる”人は、イノベーションや周囲の巻き込みにも優れる。
● 「人材育成は“好かせる→楽しませる”プロセスを重視せよ」
- 研修・教育では、単なる知識の伝達ではなく、関心→情熱→喜びの段階を意識すべき。
- 「やらされている」のではなく、「やりたい」と感じさせる工夫が重要。
● 「リーダーは“楽しんでいる人”を見逃すな」
- 楽しんで仕事している人材は、潜在的なハイパフォーマーである可能性が高い。
- 形式的評価に埋もれがちなので、モチベーションの質で評価・登用する視点が必要。
8. ビジネス用の心得タイトル付き
「知識より情熱、情熱より喜び──“楽しむ者”が未来をつくる」
この章句は、学び方・働き方・生き方すべてにおいて、
「知っている」より「好き」、「好き」より「楽しい」が最強のエンジンであることを説いています。
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