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📖 引用原文(『ダンマパダ』第33章「バラモン」第21偈)
人の来ることに心を浮かれさせず、
人の去ることに心を沈ませず、
執著を捨て去り、
内なる戦場で己に勝った者――私はその人を〈バラモン〉と呼ぶ。
――『ダンマパダ』第33章 第21偈
🔍 逐語訳(意訳)
誰かが近づいてきても、それに喜びすぎることなく、
誰かが離れていっても、それを悲しみすぎることもない。
人や物にとらわれることなく、
心の内においてあらゆる葛藤に勝利した者――
その人こそが、精神的完成者〈バラモン〉と呼ばれるにふさわしい。
🧘♂️ 用語解説
- 来る者を喜ばず、去る者を悲しまず:人間関係や状況の変化に一喜一憂しない、感情的非依存。
- 執著(アーサヴァ):所有・関係・感情・名誉などへのこだわり。
- 戦場の勝利者(サンガーマ・ヴィージャヤ):外の戦争ではなく、「心の戦場」における勝利者。煩悩・怒り・迷いに打ち勝った人。
🗣 全体の現代語訳(まとめ)
人がやってきたからといって過度に喜ばず、
人が去っていったからといって過度に悲しまない。
すべての執着から解き放たれ、
心の中にある怒りや欲望、迷いとの戦いに勝利した者――
その人こそが、仏陀の定める〈バラモン〉である。
🧭 解釈と現代的意義
この偈は、感情の奴隷にならず、心の主となれという強いメッセージです。
現代では、人間関係の変化、評価の浮き沈み、SNSの反応などに感情が翻弄されがちですが、
仏陀はその中でも「平静」「離執」「自己勝利」の境地を目指すよう促しています。
それは無感情ではなく、一喜一憂の波に呑まれず、深い静けさを保つこと。
そして、他人に勝つことではなく、自己の欲望・怒り・迷いに勝つことこそが、最大の勝利だと教えてくれます。
🏢 ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 応用・実践例 |
---|---|
感情に左右されない安定性 | 良い評価や人の好意に浮かれず、批判や離脱に落ち込まず、安定した判断ができる人が組織を支える。 |
内面の戦いに勝つ力 | 外的な競争ではなく、嫉妬・怒り・焦りといった内なる敵に勝つ人が、真のリーダーとなる。 |
人間関係の無執着的成熟 | 相手に過度に依存せず、執着せず、それでいて誠実に接する姿勢が信頼される。 |
変化への強さ | 環境・人・評価が移ろう中でも、自分を見失わずに落ち着いて軸を持てる人が価値を発揮する。 |
💡 感興のことば:心得まとめ
「真の勝利は、心の戦場で己に勝つこと」
誰かに勝つことは易しい。
だが、自分の怒り・欲・不安に勝つことこそ、
最も困難で、最も価値のある勝利である。
仏陀は、変化に揺れず、執着を離れ、
静かな勝利を内におさめた人を、〈バラモン〉と呼んだ。
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