■ 引用原文(日本語訳)
つとめはげむことについてこの区別のあることを知って、
賢い人、聖者は、自分の境地であるつとめはげむことをいつも喜ぶがよい。
――『ダンマパダ』第四章「はげみ」第2節
■ 逐語訳(一文ずつ現代語訳)
- 「つとめ励むことには、他と区別される価値がある」と知ることにより、
精進と怠惰の間には決定的な違いがあることを理解した上で、 - 賢者、聖なる人は、自分の本質(境地)に立ち返り、
修行者や知恵ある者は、自分のあり方と務めを自覚し、 - つとめ励むことを、常に喜びとするべきである。
精進そのものを喜びとして受け入れ、継続していくことが望ましい。
■ 用語解説
用語 | 解説 |
---|---|
つとめ励む(アッパマーダ) | 精神的注意、不断の努力、修行への真剣な姿勢を指す。 |
区別(ヴィヴェーカ) | 怠惰と努力、凡庸と聖性などの間に明確な違いがあるという智慧。 |
賢い人・聖者(パンディタ・アーリヤ) | 知恵と品性を備えた者。仏教における修行者や覚者を指す。 |
自分の境地(サッバーヴァ) | 本質・本来の性質。修行者としての自覚、自らの使命に立脚すること。 |
喜ぶ(モーダナ) | 形式ではなく、内発的にその実践を楽しみ、価値として感じること。 |
■ 全体の現代語訳(まとめ)
「努力をすることには、他と一線を画する高貴な価値がある」と理解したならば、知恵ある者はその努力を自らの本分とし、そこに喜びを見出すべきである。
つまり、努力することを「義務」として受け入れるのではなく、それを「自分の喜び・道」として生きよ、という教えである。
■ 解釈と現代的意義
この節は、「努力を義務としてではなく、自己の本質的行為として楽しめ」と説いています。
多くの人が「努力=苦しみ」と捉えがちですが、賢者とは努力そのものに尊さを見出し、喜びをもってそれに取り組む人を言います。
この姿勢は、現代社会における「自己実現」や「仕事の意義」を見失わないための重要な鍵とも言えるでしょう。
■ ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
働く意味の再発見 | 自分の仕事に対し、「やらされている」ではなく、「選んでいる」「楽しんでいる」という視点を持つことが、持続可能な働き方に繋がる。 |
セルフモチベーション | 他者に動かされるのではなく、「自分の本質として努力する」姿勢を持つと、主体性が生まれる。 |
リーダーシップ | 部下に努力を強いるのではなく、自らが努力を喜びとして示すことで、組織全体が自然に活性化していく。 |
習慣化と継続力 | ルーティンの中にも意味と美しさを見出すことで、継続的な改善と成長が生まれる。 |
■ 心得まとめ
「努力は義務ではない。魂の悦びである。」
努力を嫌う人が多いのは、それを「やらねばならぬ」と考えるからである。
しかし仏教は、それを「自己の境地」であり「智慧ある者の喜び」だと説く。
ビジネスでも人生でも、努力を“つらさ”から“誇りと悦び”へと変えることが、真の成長への鍵となる。
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