コストを下げることに過度に囚われてしまう「コスト病」は、多くの企業が陥りがちな罠である。
製品の「安さ」だけに焦点を置きすぎた結果、製品の魅力が失われてしまい、顧客のニーズから大きく外れてしまうことがよくある。
「贅沢品」としての価値が求められるにもかかわらず、装飾性を無視し、コスト削減だけを追求した結果、採算割れに陥る。
1. コスト優先の弊害
建売住宅や家具、外食産業など、コストを極端に意識するあまり、品質や顧客満足度が犠牲になるケースは後を絶ちません。
コストだけに目を向けた結果、粗悪品や不完全なサービスが提供され、顧客の信頼を失うという事例が頻繁に見られます。
たとえば、建売住宅で安価な材料を使い、欠陥が発生するケースが増えると、顧客からの信頼が低下するばかりか、後の修繕コストやクレーム対応で多額の経費がかかり、業績が悪化することになります。
競争が激化し、仲介業者に価格を引き下げられる状況に直面しながら、懸命にコスト削減を進めているとのことだ。
2. 製品本来の価値を見失わない
高収益を上げている企業は、単にコストを下げるのではなく、顧客が求める「価値」を提供することに重きを置いています。K社の菓子チェーンのように、原材料の品質を重視してコストをかけ、「美味しさ」を追求した結果、顧客に支持されて業績を伸ばすことができたのです。コストを削減して一時的な利益を追求するよりも、顧客が本当に求める価値を提供し、それによって収益を向上させる方が、長期的な視点で見たときに企業の成功につながります。
3. 顧客主義の生産性
本当の意味での「生産性向上」は、顧客にとって魅力的な商品やサービスを提供し、高価格でも価値が認められ、結果として売上が増加することにあります。大賀社長のように、顧客の多様なニーズを理解し、柔軟に対応する姿勢は、短期的なコスト削減以上に、持続的な成長を実現するために重要です。
4. コスト削減ではなく価値創造を
企業は、コストだけに目を奪われず、自社製品の「価値」をどう高めるかに焦点を置くべきです。生産性向上の真髄は、コスト削減ではなく、顧客が進んで選んでくれるような付加価値を提供することです。
安物であることが一目でわかる代物だった。
その商品には装飾性がまるでなく、徹底的にコスト重視で設計されていたのが原因だ。
競争が激化する中で、仲介業者はメーカーの価格を容赦なく引き下げさせる。メーカー側はコスト削減に躍起になり、その結果がこのような設計に行き着く。多くのメーカーが同じ方向に進むため、いくら売価を下げても低価格で優位性を確保するのは難しい。結果的に、デザインも価格も似通った商品が市場に溢れることになる。
ここからさらに仲介業者が買い叩きを強めるという悪循環が始まり、ついには採算割れに至る。同時に、こうした状況は商品価値そのものを低下させる結果を招く。価値が下がった商品は売りにくくなり、問屋はさらに値下げを要求する……。この流れが続くと、まるで底なしの泥沼に足を取られたような状態になり、もがけばもがくほど深みに沈んでいく。
まさにこの悪循環に起因していたのだ。
商品は単に値段が安ければ良いわけではない。顧客のニーズに応えることが重要だ
「なくても困らないもの」だ。
言い換えれば贅沢品であり、だからこそ装飾性が最優先されるべきだ。それを忘れ、コストだけを追求した結果、このような不自然な商品が生まれてしまったのだ、
あなたの会社はこれまで安物志向にとらわれていたため、装飾性を重視する発想へ転換するのは容易ではないだろう。しかし、それ以外に生き残る道はない。だからこそ、必死に研究し努力する必要がある。
贅沢品は安物に比べて必ず収益性が高い。それこそが、あなたの会社が赤字から黒字へ転換するための唯一の道だ、と伝えた。
「安いことは良いことだ」という神話は、驚くほど根強い。その影響で、本来の商品が持つべき役割を果たせない粗悪品が市場に溢れるという状況を招いている。
最終的に、顧客のために真摯に奉仕する姿勢を持つ会社が勝ち残るのだ。
過度なコスト削減に陥り、欠陥商品を市場に出した結果、全国的にクレームが発生した。
一部の誠実で賢明な業者は、原価をある程度犠牲にしながらも、質の高い商品を提供することで高い収益を上げている。
その秘訣は、一食あたりの収益が低くても、提供する商品の数が多いことで、全体としての収益を確保している点にある。
K社は菓子のチェーン店だ。同社の社長は現在、コストを度外視して「うまいものづくり」に全力を注いでいる。かつてはコスト削減に囚われた結果、商品の売上が伸び悩み、低収益に苦しんでいた。しかし、私の提言を受け、その考え方の誤りに気づき、「うまいもの主義」へと方針を切り替えたのだ。
うちは他社よりも原料費が5%高いからこそ、うまい菓子が作れるんだ。それが顧客に喜ばれて、結果的に高収益を上げさせてもらっているんだよ。
「大企業はコストのことしか考えない偏った体質になっている」
「多様なニーズを持つ顧客の要求を満たす」という基本姿勢を貫き、その結果として優れた経営を実現している。
「コスト病」というのは厄介極まりない病気だ。この病にかかると、「コスト」以外の視点が完全に失われてしまう。
その背景には、多くの「権威者」と称される素人が、コストだけを問題視している現状がある。また、「生産性向上」を掲げる人々も、結局のところそれをコスト削減と同一視しているに過ぎないのだ。
要するに、「生産性を上げるためには企業内の活動を合理化すべきだ」という論調が支配的になっている。
しかし、本当の意味での生産性向上とは、顧客が求める商品やサービスを提供することで、まずはより高い価格で販売できるようになり、その結果として販売数量も増加し、高収益を実現することに他ならない。この基本を忘れてはならないのだ。
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