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己を腐らすのは、己の悪性なり


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■引用原文(日本語訳)

この極めて性の悪い人は、仇敵がかれの不幸を望むとおりのことを、自分に対してなす。
あたかも蔓草が沙羅の木にまといつくようなものである。

―『ダンマパダ』第11章 第10偈


■逐語訳

  • この極めて性の悪い人は(pāpadhammassa):性根が悪く、内面が悪意に満ちた者は、
  • 仇敵がかれに望むことを(sattuno yathā):敵がその人に降りかかるよう願う不幸を、
  • 自分に対してなす(attānaṁ karoti):自分で自分に対して行うようなものだ。
  • 蔓草が沙羅の木にまといつくようなものである(maluvaṁ iva sālam):ツル植物が沙羅の木に絡みつき、その樹を腐らせる様に似ている。

■用語解説

  • 性の悪い人(pāpadhammassa):内面に邪悪な性質や執着を持ち、悪を習性化している人間。
  • 仇敵(sattu):敵意を持ち、不幸を望む存在。ここでは比喩的に“災い”の象徴。
  • 蔓草(maluva):他の植物に巻きつき、覆い、時には枯らしてしまう性質のあるツル草。
  • 沙羅の木(sāla):仏教で神聖視される堅く美しい樹木。ここでは「本来の自己」の象徴。

■全体の現代語訳(まとめ)

仏陀はここで、「性根の悪い人間は、自分自身に仇敵が与えるような不幸を引き起こす」と説いています。まるでツル草が美しい沙羅の木にまといつき、やがてそれを腐らせるように、悪しき性質が自分の本来の美しさ・力をむしばんでいく――その姿を鮮烈な比喩で語っているのです。


■解釈と現代的意義

この偈は、**「最大の敵は外にあらず、内にある」**という教えです。
他人による妨害や失敗の原因を外に求めがちな現代において、この句は、「自分自身の性格や習慣が、最も深く自己を蝕む」という真実を教えてくれます。
自己中心的な思考、慢心、嫉妬、虚飾などが積み重なることで、本来持っている可能性や徳性を、自ら破壊してしまうのです。


■ビジネスにおける解釈と適用

観点現代ビジネスでの適用例
自己破壊的行動の警鐘傲慢・怠慢・責任転嫁などの悪習は、周囲でなく自分の信用と成長をじわじわと損なう。
リーダーの影響力カリスマや肩書きがあっても、慢心や誠意の欠如があれば、組織全体に悪影響を与える。
組織文化の崩壊不正・不透明な慣習が蔓延すると、最終的には組織そのものの命を縮めてしまう。
成長の阻害要因他責志向・批判癖・感情的反応が、学びや信頼の芽を摘み取ってしまう「ツル草」となる。

■心得まとめ

「敵は己の中に棲む。育てれば、己を枯らす。」

仏陀のこの偈は、真の害は外ではなく、内にある習慣・性質・執着によって引き起こされることを明示しています。
どれだけ立派な外見や能力を持っていても、内なるツル草(悪性)を放置すれば、それがやがて自分を締め付け、腐らせていくのです。
ビジネスにおいても、リーダーとしても、自らの内面の健全さを整えることが、成長と成功の最重要課題であると、この偈は教えてくれます。

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