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快適さに執着すれば、孤立と対立を招く


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■原文(一五)

つねに重衣をまとっているが、
飲食物と衣服と寝具と坐具を得る人は、
多くの敵をつくる。


■逐語訳

  • つねに重衣をまとっている:常に厚着をしている者。ここでは物質的に満たされている・恵まれた者の象徴。
  • 飲食物と衣服と寝具と坐具を得る人:生活に必要なものをすべて得ている、あるいは豊富に持っている人。
  • 多くの敵をつくる:その振る舞いや生活態度が、他人の嫉妬や反感、不信を招く。

■用語解説

  • 重衣(じゅうえ):寒さをしのぐための厚い衣服。仏教においては、慎ましさに反する贅沢の象徴。
  • 坐具(ざぐ):座るための道具、クッションや坐蒲など。必要以上に快適さを追求する態度への戒め。
  • 敵(てき):実際の敵対者というより、「心に反感を抱く他者」「距離を取るようになる人々」の意。

■全体の現代語訳(まとめ)

常に厚着をして温かく快適な生活を送り、食事・衣服・寝床・坐具――すべてを手に入れている人。
そのような人は、知らぬうちに他人の嫉妬や誤解、反感を招き、多くの敵をつくることになる
物質的な充足に執着すればするほど、周囲との心の隔たりも大きくなる。


■解釈と現代的意義

この句は、「豊かさそのもの」を否定しているのではなく、「豊かであることへの無自覚さと誇示の危険」を戒めています。
現代でも、過剰に快適で便利な暮らしや、贅沢な消費スタイルが「当たり前」となっている人は、
知らず知らずのうちに他者の劣等感・怒り・距離を生んでしまうことがあります。
特に組織や共同体の中では、「自分だけが得ている」ことへの無頓着さが、孤立や不信を招くのです。


■ビジネスにおける解釈と適用

観点解釈・適用
組織内格差役職者や管理職が過剰な特権・待遇を受けていると、それが周囲に不満や分断を生む。
チーム運営自分の快適さばかり優先すると、他者との協調や共感が失われる。
ブランドや広告戦略富の誇示型マーケティングは、一部の層に反感を招くこともあり、慎重さが必要。
リーダーシップリーダーは質素であれとは言わないが、「自分だけが満たされている状況」には敏感であるべき。共有と共感が重要。

■心得まとめ

「満ち足りるほどに、見えなくなる――他人の目と心」

人は快適になりすぎると、他者の立場や感情への想像力が鈍くなる
それが、無自覚な言動となり、やがては孤立や反感を生む。
ビジネスにおいても、社会においても、「自分だけが得ている」ことに無頓着な者は、いつしか信頼を失う。
慎みとは、美徳であると同時に、最強のリスクマネジメントである。

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