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引用原文(日本語訳)
〔身体を〕離れ、またそこに止まり、諸要素を伴って、〔対象を〕享受している彼を、
迷える者は認識しない。
しかし知識の眼をそなえた人は認識する。
(『バガヴァッド・ギーター』第15章 第10節)
逐語訳
魂(ジーヴァ)は、身体を離れたり、再びそこにとどまったりしながら、
物質の要素(感覚・思考)を伴って、対象を味わい続けている。
だが、迷妄に覆われた者たちはその魂の存在を理解できない。
一方で、真の知識の目を持った者は、それを正しく認識する。
用語解説
用語 | 意味 |
---|---|
身体を離れ/止まる | 転生・生死を通じて、魂が肉体に宿ったり離れたりすること。 |
諸要素(グナ) | 感覚器官、思考、物質的構成要素(五大・心など) |
享受する | 感覚を通して世界を体験し、喜びや悲しみを味わうこと。 |
迷える者(モーハ) | 無知や執着にとらわれた者。感覚世界に没入し、霊的な本質を理解しない人。 |
知識の眼(ジニャーナ・チャクシュ) | 物質ではなく智慧によって本質を見る目。識別力・霊的知見。 |
全体現代語訳(まとめ)
魂は、身体を離れたりそこにとどまったりしながら、
感覚と心のはたらきによってこの世界を体験している。
だが、無知に覆われた人々は、この魂の存在に気づかない。
一方で、真の智慧を持つ人は、その魂の働きを見抜くことができる。
解釈と現代的意義
この節は、「私たちの行動・感情・思考の背後には、“見る者”=魂がいる」ことを示しています。
多くの人は、表面的な現象――体、言葉、感情――に目を奪われますが、その奥で働いている“変わらぬ主体”に気づくことが、知者の目だと説かれています。
現代においては、「目に見える表現」に惑わされず、「目に見えない本質」を見ることの重要性として応用できます。
ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
表面的言動に惑わされない観察力 | 社員や顧客の表面的な態度・言葉にとらわれず、その背景にある動機や価値観を観察する。 |
本質を見抜くリーダーシップ | 数字や成果だけを追わず、組織文化やチームのエネルギーの流れなど目に見えない部分に注目する。 |
問題の核心をつかむ力 | 表面的なトラブルの背後にある“見えない構造”を見抜き、根本的な解決に導く。 |
自己認識の深化 | 自分の行動や反応を「観察する自分」に気づくことで、感情や習慣に支配されない自律的判断が可能になる。 |
心得まとめ
「見る目がなければ、動きの奥の静けさに気づけない」
人は常に動き、話し、変化している。
だがその奥には、何も変わらない「見ている主体」が存在する。
目に見えるものだけを見ていては、真の理解も成長も訪れない。
だからこそ、「知識の眼」で人と物事を見よ――
それがブレない判断と本質的な関係を築く鍵である。
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