目次
引用原文(日本語訳)
この樹の形は、この世ではそのように理解されない。
その終わりも、始めも、基底も(人間の知では)知られない。
この根が伸張したアシュヴァッタ樹を、堅固な無執着の斧で断ち切れ。
(『バガヴァッド・ギーター』第15章 第3節)
逐語訳
この世界樹の真の姿は、この世(感覚と理性の領域)では正しく理解されない。その始まりも、終わりも、土台も、人間の知覚では捉えられない。
そのため、この下方に根を広げるアシュヴァッタ樹は、堅固なる「無執着(ヴァイラーギャ)」という斧によって断ち切られるべきである。
用語解説
用語 | 意味 |
---|---|
この樹 | 宇宙的存在・輪廻の世界・因果の網の象徴(サンサーラ) |
この世では理解されない | 感官・知性のレベルでは把握できない超越的構造であること |
終わり・始め・基底 | 時間的・空間的な起点・終点・支えとなる仕組みのこと |
無執着(ヴァイラーギャ) | 欲望・関係・結果への執着を手放した精神状態 |
斧 | 鋭く、強く、根源的な問題を断ち切る手段。ここでは「無執着」がその手段となる |
全体現代語訳(まとめ)
この世界の仕組みは、感覚や知性ではその全貌を理解することができない。
始まりも終わりも見えず、その本質もつかめない。
だからこそ、執着という根に養われたこの世界樹を、強固な「無執着の心」という斧で断ち切る必要があるのだ。
解釈と現代的意義
この節は、「理屈や知識によって世界の根本は理解し得ない」という限界を示しています。
人生や社会の現象の本質を完全に見通すことは不可能であり、それに囚われて悩み苦しむよりも、「無執着」という行動の選択によって超えていくことが大切だと教えています。
つまり、理解するよりも断ち切ることが重要な場合があるということです。
ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
理解より行動 | 分析や思考を尽くしても見えない問題(市場変化・人の心理など)に対しては、執着を手放して動く勇気が必要 |
執着を断つ決断力 | 失敗プロジェクト・非効率な業務・過去の成功体験への執着を、無執着の姿勢で断ち切ることが再生への道となる |
無理に意味を求めない | 不確実性や変化の激しい時代に、すべての理由や成果を理解しようとしすぎると疲弊する。ときに「手放す力」が鍵 |
マネジメント判断 | 感情的なつながりや惰性によって続けている関係性・施策を、冷静に断ち切る無執着の姿勢が組織を強くする |
心得まとめ
「わからぬならば、切り離せ。理解を超えるには、執着を超えよ」
人生やビジネスにおいて、すべての問題を「理解」しようとすることは、ときにさらなる混乱や停滞を招く。
理性を越えた領域には、「無執着」という実践によって切り込むしかない。断ち切る力こそが、新たな成長と自由を生み出す第一歩となる。
コメント