MENU

思いつきは続かず、ひらめきは迷いに変わる

物事を思いつきのまま始めると、勢いにまかせて行動できるのは最初だけ。
熱が冷めれば、すぐに手を止めてしまう。これでは、「不退の輪(限りなき前進)」など望めない。

また、一時的な感覚やひらめきによって「悟った」と思ったとしても、
それが真の悟りでないかぎり、いずれまた迷いや疑いが生じてしまう。
このような悟りは「常明の燈(つねに明るい光)」ではなく、すぐに揺らぎ消えてしまう不安定なものである。

ピーター・ドラッカーもまた、「ひらめき頼りのオーナー経営者は、ひらめきのように消えた」と語っており、
孔子も「倦むことなかれ」「人を誨えて倦まず」と、続けることの大切さを何度も説いている。
継続には、感情や直感ではなく、明確な信念と地道な努力が必要なのだ。


原文(ふりがな付き)

「意(い)の興(おこ)るに憑(たの)りて作為(さくい)するは、
随(したが)って作(な)せば則(すなわ)ち随(したが)って止(や)む。
豈(あ)に是(こ)れ不退(ふた)いの輪(りん)ならんや。

情(じょう)の識(し)るに従(したが)いて解悟(げご)するは、
悟(さと)ること有(あ)れば則(すなわ)ち迷(まよ)うこと有(あ)り。
終(つい)に常明(じょうめい)の燈(とう)に非(あら)ず。」


注釈

  • 意の興る(おこる):思いつき。ふとしたやる気や衝動。
  • 不退の輪(ふたいのりん):仏教用語。不退転の法輪。真理をもって進み続けること。後戻りしない継続的努力の象徴。
  • 識解悟(しきげご):感覚や情緒によって理解・悟った気になること。
  • 常明の燈(じょうめいのとう):常夜灯。いつまでも絶えずに照らし続ける仏の智慧の光。真の悟りの象徴。

パーマリンク候補(英語スラッグ)

  • inspiration-is-not-enough(ひらめきだけでは足りない)
  • true-progress-needs-constancy(本当の前進には継続が必要)
  • momentary-light-vs-eternal-lamp(一時の光と常明の灯)

この条は、現代の「スピード」「直感」「アイデア勝負」などを重視する風潮に対する鋭い警鐘とも読めます。
本当に長く価値のあるものを築くためには、思いつきではなく、根気強く継続できる「確かな土台」が必要なのです。

1. 原文

憑意興作為者、隨作則隨止。豈是不退之輪哉。
從情識解悟者、有悟則有迷。終非常明之燈。


2. 書き下し文

意(い)を興(おこ)すに憑(よ)りて作為(さくい)するは、随(したが)って作せば則(すなわ)ち随って止(や)む。豈(あ)に是(こ)れ不退(ふたい)の輪(りん)ならんや。
情識(じょうしき)に従(したが)いて解悟(げご)するは、悟(さと)ること有(あ)れば則ち迷(まよ)うこと有り。終(つい)に常明(じょうめい)の燈(とう)に非(あら)ず。


3. 現代語訳(逐語訳/一文ずつ訳)

  • 「意を興すに憑りて作為するは、随って作せば則ち随って止む」
     → 気分や一時の意欲に任せて物事に取り組む者は、やる気があれば動き、気が乗らなければ止めてしまう。
  • 「豈に是れ不退の輪ならんや」
     → それがどうして決して止まらない“修行の車輪(=努力の継続)”と言えるだろうか(=言えない)。
  • 「情識に従いて解悟するは、悟ること有れば則ち迷うこと有り」
     → 感情や知識に従って得た悟りは、一時的なものであり、悟ることがあってもまた迷うこともある。
  • 「終に常明の燈に非ず」
     → 結局それは、常に明るく照らし続ける灯火(=真の智慧)ではないのだ。

4. 用語解説

  • 憑意興(ひょういこう):一時的な思いつきや気分、意欲に頼ること。
  • 作為(さくい):行動、作業、企て。
  • 不退の輪(ふたいのりん):仏教語で、退かず進み続ける修行・精進の象徴。継続の力。
  • 情識(じょうしき):感情や知識、思考の表層部分。悟りに至らぬ人間の認識の限界。
  • 解悟(げご):理解し、悟ること。特に一時的なひらめきや理解。
  • 常明の燈(じょうめいのとう):常に明るく照らす灯火。真の智慧・ブレない信念の比喩。

5. 全体の現代語訳(まとめ)

その場の気分や思いつきに任せて行動する人は、やるときはやるが、やる気が失せればすぐに止めてしまう。それでは、後退することなく進み続ける“不退の修行の車輪”とは到底言えない。

また、感情や知識に頼って得た悟りや理解も、一時的なひらめきにすぎず、それがあれば逆に迷いも生じる。そうしたものは、決して真に明るく灯り続ける“智慧の灯火”とは言えないのである。


6. 解釈と現代的意義

この章句は、**「本物の継続力と真の智慧とは何か」**という問いを突きつけています。

  • 意欲に頼った行動は続かない。
     一時的なモチベーションや気分で動く人は、熱しやすく冷めやすく、結果を残しにくい。
  • 感情や知識だけでは本物の“悟り”に至らない。
     たとえ鋭い理解があったとしても、それが一過性のものであれば真の判断力とは言えない。

この句は、**「静かに継続する精神の強さ」と「揺らがない内的な明灯」**の必要性を教えています。


7. ビジネスにおける解釈と適用(個別解説付き)

●「モチベーション頼みの行動は成果を持続させない」

  • プロジェクトや挑戦を、やる気や熱意だけで始めても、長期的な壁にぶつかったときに失速する。
  • 意欲ではなく「仕組み」「習慣」「信念」による継続が鍵。

●「“ひらめき”より“持続的思考”が組織を導く」

  • アイデアに飛びついても、全体の構造や本質的理解がなければ一貫性を失う。
  • 感情や印象だけに頼る判断は、ブレやすく、組織の軸を揺らす。

●「“常明の燈”を持つリーダーが組織を照らす」

  • 価値観や使命に裏打ちされた静かな自信と継続的な行動力が、真に信頼されるリーダーの条件。
  • 一時的なカリスマ性より、ぶれない“内なる灯火”を重視すべき。

8. ビジネス用の心得タイトル

「意欲より信念、ひらめきより内なる灯──真の継続力が道をひらく」


この章句は、「一時の情熱や知識ではなく、“揺るぎない心”と“持続的行動”が真価を生む」という、人として・リーダーとしての本質的なあり方を説いています。

真の智慧や成果とは、“熱くなること”ではなく、“静かに灯り続けること”によってこそ得られるのです。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次