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時はすべてを呑み込む――不可避の流れに立つ勇気


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■原文(第11章 第32節)

聖バガヴァットは告げた。
「私は世界を滅亡させる強大なる〈カーラ〉(時間)である。
諸世界を回収するために、ここに活動を開始した。
たといあなたがいないでも、敵軍にいるすべての戦士たちは生存しないであろう。」


■逐語訳(一文ずつ訳す)

  • 私は「カーラ」、すなわち世界を滅ぼす強大なる「時間」である。
    (kālo’smi loka-kṣhaya-kṛit pravṛiddho)
  • 諸世界を消滅させるために、私は今ここに来た。
    (lokān samāhartum iha pravṛittaḥ)
  • たとえあなたが戦わなくとも、向こう側のすべての戦士たちは滅びる定めにある。
    (ṛite’pi tvāṁ na bhaviṣhyanti sarve)

■用語解説

用語解説
カーラ(kāla)「時間」「時」。ヒンドゥー思想では創造と破壊を支配する絶対的存在でもある。
回収(samāhartu)ここでは「収束・消滅させる」意。宇宙の終末的吸収、再統合を意味する。
滅亡(loka-kṣhaya)「世界の破壊」あるいは「人間界の終末」などを意味。戦争における死の象徴。

■全体の現代語訳(まとめ)

私は、世界を破壊へと導く、時間そのものである。
すべての世界を終わらせるために、私は今ここに現れた。
たとえ君がこの戦いに参加しなくとも、向こうの軍の戦士たちは
すでに定められた運命によって滅びるであろう。


■解釈と現代的意義

この節は、『バガヴァッド・ギーター』の中でも最も有名な一節の一つです。
神が自らを「カーラ=時間」だと明言するこの瞬間、
**「時の流れ」=「すべてを変化・崩壊させる力」**という認識が明らかになります。

この表現には以下のような現代的意義があります:

  • どんなに優れた戦略や意志も、「時間」という巨大な力には逆らえない。
  • だからこそ、「自分がやらなければ世界は変わらない」という誤った自己中心的思考を捨て、
     役割の自覚と受容に切り替えるべきだというメッセージが込められています。

■ビジネスにおける解釈と適用

観点適用例
組織や事業のライフサイクル成長・栄光の時代にもやがて衰退・終焉が訪れる。「時間」という現実を見据えた戦略が必要。
リーダーの役割意識「自分がいなければ」という傲慢を捨て、「時の流れにおける一つの要素」として冷静に行動する姿勢。
危機対応不可避の崩壊や衰退(市場消失・技術革新など)に対して、恐れず参加し、適応する覚悟。

■心得まとめ

「時はすでに流れ、運命は定まっている」

世界を動かす巨大な意志――それが「時間」だ。
その前では、個人の意志や力はあまりに小さい。

だが、だからこそ
恐れや迷いを捨て、自分の役割を受け入れ、行動せよ。

自分が動こうが動くまいが、変化は訪れる。
ならば、その変化に意味を与える行動を選べ。

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