簿記には大きく分けて商業簿記と工業簿記の2種類があります。それぞれの目的や対象となる業種に違いがあり、工業簿記では特に製造業における費用管理が重要な役割を果たします。
本稿では工業簿記とその中核をなす原価計算について詳しく解説します。
商業簿記と工業簿記の違い
商業簿記とは
商業簿記は、主に商品売買業を対象とした簿記です。
商品を仕入れ、そのままの形で販売する企業において、収益や費用、財務状況を記録し管理するための手法です。
これまで学んできた商業簿記では、商品の売買に伴う取引を中心に扱っていました。

工業簿記とは
一方、工業簿記は製造業を対象とした簿記です。
製造業では、仕入れた材料を加工して製品を作り、それを販売するという一連の流れがあります。
そのため、工業簿記では「どの製品を作るためにどれだけの費用がかかったのか」を把握することが重要です。

原価計算の基本
製造業では、製品を製造する過程で材料費や人件費、水道光熱費などさまざまな費用が発生します。これらの製品製造にかかる費用を原価と呼び、原価を計算することを原価計算といいます。
原価計算の目的
- 製品1個あたりのコストを正確に算出する。
- 無駄な費用を発見し、改善する。
- 適正な販売価格を設定するための基準を提供する。
製品の原価を把握することで、企業は収益性の向上や効率的な経営を目指せるようになります。
会計期間と原価計算期間の違い
工業簿記では、商業簿記と同様に1年間を会計期間とします。
しかし、原価計算においては、より短いスパンで費用を管理する必要があります。
このため、原価計算では通常1か月間を1サイクルとする原価計算期間を設定します。
原価計算期間の意義
- 短期間で費用の発生状況を把握することで、無駄を早期に発見し改善できる。
- 製造プロセスの効率化を図りやすくなる。
仕掛品とは?
製造業では、材料から完成品になるまでの間に加工が行われます。この加工途中の未完成品を仕掛品といいます。
仕掛品は製造プロセスにおいて発生するもので、完成品の一部として扱われるため、原価計算においても重要な要素となります。

まとめ
工業簿記と原価計算は、製造業における費用管理と効率的な経営の実現に不可欠な手法です。
商業簿記が「商品の売買」を管理するのに対し、工業簿記は「製品の製造と販売」を対象とし、より詳細で高度な費用分析が求められます。
原価計算を活用することで、企業は無駄を削減し、製品コストの適正化や競争力の向上につなげることができます。
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