概要
企業規模が大きくなると、本社と工場で異なる機能を担うため、効率的な管理を実現するために工場会計を本社会計から独立させる場合があります。この場合、工場にも独自の帳簿を設置し、製品の製造に関する会計処理を工場で記録・管理します。
1. 工場会計を独立させる目的
- 製造原価の管理:
- 製品製造に直接関連する取引を独立して記録し、詳細なコスト管理を可能にします。
- 本社の負担軽減:
- 本社は経営全般に専念し、製造に関する詳細な管理業務を工場に委任できます。
- 内部統制の強化:
- 工場と本社の責任範囲が明確になり、不正防止や管理効率の向上につながります。
2. 工場の帳簿に設置される諸勘定
工場会計を独立させる場合、工場の帳簿には製品の製造に関する勘定科目が設置されます。以下は代表的な勘定科目です。
勘定科目 | 内容 |
---|---|
材料 | 原材料や部品など、製造に使用される資材の管理。 |
仕掛品 | 製造途中の製品(未完成品)の原価を集計。 |
製品 | 製造が完了した製品の原価を記録。 |
製造間接費 | 製造に直接かかわらないが、製造全体に必要な費用(工場の光熱費、修繕費など)を記録。 |
労務費 | 工員に支払われる賃金・給与を管理(直接労務費と間接労務費に分けて記録)。 |
製造原価報告書 | 工場で発生した製造原価を集計し、本社へ報告するために作成。 |
本社勘定 | 本社との取引や資金の移動を記録(例: 本社資金、本社売掛金、本社買掛金など)。 |
3. 工場会計と本社会計の関係
工場会計を独立させた場合、工場と本社間で取引を記録するために、相互に対応する勘定科目が使用されます。
例: 工場への資金送金
- 本社側の仕訳: 借方: 工場勘定貸方: 現金預金\text{借方: 工場勘定} \quad \text{貸方: 現金預金}
- 工場側の仕訳: 借方: 現金預金貸方: 本社勘定\text{借方: 現金預金} \quad \text{貸方: 本社勘定}
4. 工場会計の運用フロー
- 工場内での取引記録:
- 材料購入、製造工程での原価計算、仕掛品・製品管理を工場帳簿で記録。
- 工場原価の報告:
- 工場で発生した製造原価を「製造原価報告書」として本社に報告。
- 本社会計への反映:
- 本社では工場から報告されたデータをもとに、損益計算書や貸借対照表を作成。
5. 工場会計のメリットと課題
メリット
- 製造原価に関する情報の透明性向上。
- 工場のパフォーマンスを詳細に分析可能。
- 各部門の責任範囲が明確化。
課題
- 帳簿が分かれるため、管理が煩雑になる可能性。
- 工場会計と本社会計の連携ミスにより不一致が生じるリスク。
6. 工場会計が独立している場合の財務諸表の作成
工場会計を独立させても、最終的に本社会計と統合され、次の財務諸表に反映されます。
- 損益計算書:
- 工場で集計した製造原価を基に売上原価を計算。
- 貸借対照表:
- 工場の材料、仕掛品、製品などの資産を本社会計に統合。
工場会計の独立は、企業規模が拡大し、詳細な原価管理が求められる際に採用される重要な会計手法です。
コメント