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■引用原文(日本語訳)
「世間が彼を恐れず、彼も世間を恐れない、喜怒や恐怖や不安を離れた人、彼は私にとって愛しい。」
(『バガヴァッド・ギーター』第12章 第15節)
■逐語訳
その人によって誰も恐怖を感じず(ヤスヤー・ナ・ウッドヴェーゲナ・ローカハ)、
また彼自身も誰に対しても恐れを抱かず(ローカン・ナ・ウッドヴェーゲート・ヤハ)、
喜び・怒り・恐れ・不安を離れた人(ハルシャ・アマーシャ・バヤ・ウドヴェーガ・ムクタハ)、
そのような人は、私(神)にとって愛しい存在である(サ・メ・プラーヤハ)。
■用語解説
- 世間が彼を恐れず:他者に対して威圧感や攻撃性を持たず、周囲に安心を与える存在であること。
- 彼も世間を恐れない:外部環境や人間関係に過度な恐怖や萎縮を抱かない精神的安定。
- 喜怒哀楽から自由(ハルシャ・クローダ・バヤ・ウドヴェーガ):喜びや怒り、恐怖や不安に心を支配されない状態。
- 愛しい(プラーヤハ):神(クリシュナ)が深く好み、霊的に高く評価する人物であること。
■全体の現代語訳(まとめ)
他者を威圧したり怖がらせることもなく、また自分も周囲を恐れない。喜び・怒り・恐怖・不安といった感情に支配されず、内に静けさと平穏を保つ人――そのような人物こそ、神にとって真に愛される存在である。
■解釈と現代的意義
この節は、「精神の平和と周囲への安心感」が真の成熟であることを示しています。
自らの感情を制御し、人に恐れを与えず、人からの恐れにも動じない――それは単なる「穏やかな人」ではなく、強さとやさしさが調和した“内面の達人”です。
現代社会では、感情的・威圧的な人物が誤って「強い」とみなされることもありますが、ギーターはその逆を指し示します。本当に強い人は、誰も傷つけず、誰からも脅かされず、心静かに立っている人なのです。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
心理的安全性の提供者 | 部下やチームメンバーが萎縮せず自由に意見を言える雰囲気を作れる人は、信頼と創造性を引き出す。 |
感情マネジメント | 怒りや喜びに振り回されず、冷静かつ安定した判断ができる人が、危機時に真価を発揮する。 |
外圧に屈しない安定性 | 社会や他者の評価に振り回されず、自らの軸で判断・行動できる人は、長期的に強い影響力を持つ。 |
■心得まとめ
「威さず、怯えず、静かなる者が、もっとも尊ばれる」
本当の強さとは、怒りや恐れに支配されず、他者に安心を与えること。
人を傷つけず、自分も誰にも脅かされない――そうした内面の静けさと強さこそが、ギーターの教える理想的人間の姿である。
ビジネスにおいても、人間関係においても、恐れと不安のない空気を生み出す人こそ、最も信頼され、最も愛される存在となる。
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