目次
📖引用原文(日本語訳)
多くの人々は恐怖にかられて山々、林、園、樹木、霊樹などをたよろうとする。
――『ダンマパダ』 第二七章「観察」第三十一節
🧩逐語訳と解釈
- 多くの人々は恐怖にかられて:苦・災い・死・不安などに直面し、精神的に揺さぶられている状態。
- 山々、林、園、樹木、霊樹:自然の中の聖地。インド的文脈では、修行の場、精霊が宿ると信じられた場など。宗教的安心感を求める対象。
- たよろうとする:それらを避難所、拠り所、安全地帯として「逃げ込もう」とする行為。
🧠用語解説
用語 | 解説 |
---|---|
山・林・園・霊樹 | すべて自然の静けさや神聖性を感じる象徴。特にインド思想では、修行者や信者が「避難・祈りの対象」として求める場所。 |
恐怖(バヤ) | 無常・死・病・苦悩といった、あらゆる存在的不安。 |
たよる(サラナ) | 安全を求め、依存すること。仏教では「三宝に帰依する」意味の「帰依(サラナ)」にも通じる概念。 |
🪷全体の現代語訳(まとめ)
人々は、恐れや不安に襲われたとき、
山に逃げようとし、森に籠ろうとし、
庭園や樹々、あるいは霊的な木々にすがろうとする。
彼らは、そこに安全や癒しを見出そうとするが、
それは真の拠り所ではない――。
🌱解釈と現代的意義
この句は、人間が本能的に「外の何か」に安らぎや救いを求めようとする姿を示しています。
自然や聖なる場所に行けば安心できる。苦しいときは旅に出よう。パワースポットに行こう。
それらは一時的な安心にはなるかもしれませんが、
仏教の教えにおいては、外に「真の庇護所」は存在しないのです。
真に恐れを克服するには、外の場所ではなく、自分の心の中に智慧を築くこと。
この句は、次の句(第三十二節)で語られる「三宝への帰依(仏・法・僧)」という真の拠り所へと視点を導いています。
💼ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 実務への応用例 |
---|---|
問題の外部化 | 社内の課題や不安から逃れて、転職・異動・環境変更で解決しようとするが、根本的な問題は内在している。 |
心理的依存先の誤認 | ブランド・カリスマ・権威に依存して安心しようとするが、それは本質的ではない。 |
形式依存の危険性 | 業務の「枠組み」「会議体」「制度」に安心を見出し、実際の問題解決や思考を止めてしまう。 |
危機時の逃避反応 | 苦しい時に「忙しさ」や「作業」に逃げ込むが、それは真の解決を遠ざける。 |
📝心得まとめ
「逃げる場所は心の外にはない」
人は不安になると、
山に籠もろうとし、森に逃げようとする。だが、恐れは外にはない。
恐れは自分の心が作り出している。真に拠るべきは、自分の心の中に育てる智慧と平常心である。
この第三十一節は、「帰依」の正しい方向を再定義する重要な導入句です。
「何に頼れば、私は安らげるのか?」という問いに対して、
仏教は、自然や偶像ではなく、「三宝」――仏・法・僧に帰依せよと次節で答えます。
コメント