自己を磨く者こそ、真の匠である

2025年6月24日

📖 引用原文（日本語訳）

水道をつくる人は水をみちびき、矢をつくる人は矢を矯め、
大工は木材を矯め、賢者は自己をととのえる。

——『ダンマパダ』第六章「賢い人」第80偈

用語	意味
水をみちびく	水の自然な流れに人為的な調整を加え、必要な方向へ導くこと。環境を整える比喩。
矢を矯める（ためる）	曲がったものをまっすぐに矯正する意。修正・調整の行為。
木材を矯める	木材の癖や曲がりを見抜き、用に適した形へと加工する熟練の技術。
自己をととのえる	心・言葉・行動を制御し、徳や智慧を磨いていくこと。

水を自在に導く者が水道技術者であり、矢をまっすぐにする者が矢匠、大工は木材を整えるように、賢者とは、自分自身の人格や行動を矯正し、整え続ける人のことをいう。それは他人を変えるよりも、まず自分を磨くことの大切さを説いている。

この偈は、「自己修養」という仏教的実践の核心を描いています。職人が道具や素材に向き合い、手を尽くして整えていくように、賢者は自分自身という素材と向き合い、日々心と行動を整えていくのです。他者や外の環境を変えようとする前に、自らを深く見つめ、整えること――それが真の成長と影響力の源なのです。

テーマ	解釈と応用
セルフマネジメント	時間管理、感情のコントロール、健康管理など「自分を整える力」はすべての仕事の土台。
リーダーシップの根幹	他人に厳しくする前に、まず自分の言動に一貫性があるか。整えられた人格が部下に影響を与える。
職人精神の継承	成果を求めるのではなく、過程と向き合い、自分自身のあり方を日々改善することで結果はついてくる。
継続的改善（Kaizen）	環境や他人に責任を求める前に、まず自分の行動を見直し、改善する文化をつくることが持続的成長の鍵。

水を制するには道を整え、木を活かすには形を整える。人間もまた、自分という素材を整えることで、初めて他を導くことができる。職人のように、自分という“道具”を日々ととのえよ――その心こそが、賢者の歩む道である。

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