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正論の押しつけは、忠義にあらず


一、原文と現代語訳(逐語)

原文:
よき事も過ぐるは悪し。談義・説法・教訓なども、言ひ過ごせば、害になり候となり。
                     (聞書第二)

現代語訳:
どんなによいことでも、やりすぎればかえって害となる。議論・説法・教訓といったものも、言い過ぎると害になるものである。


二、用語と背景の解釈

用語解釈
談義思想・教訓的な語り合い、討論。禅僧などの宗教者が行う説法を含む。
説法・教訓人に対して「正しい道」を諭す言葉。道徳的・宗教的なアドバイス。
言ひ過ごせば害になる「言いすぎ」は相手の心を閉ざし、反発や疲労、反感を生みかねない。

この一節は、たった一行ながら、「正義感や善意が、時に人を傷つけ、組織を壊す」という、非常に本質的な洞察を含んでいます。


三、解釈と現代的意義

1. 「よいこと=常に正しい」とは限らない

  • 正論は正しいが、相手の受け取り方や状況を無視すれば“凶器”にもなる
  • よいことを言っているつもりでも、相手が心を閉ざせば意味をなさない。

2. 人を動かすのは「共感」、押しつけは「支配」

  • 議論や説教は、相手の“気づき”を引き出すものでなければならない。
  • 教えることと支配することは違う。上司が部下に、親が子に、よかれと思って説教を繰り返すうちに関係が壊れる例は多い。

3. 沈黙の効用

  • 「言いすぎない」「あえて言わない」ことは、相手への敬意の表現であり、思慮の証でもある。
  • 余白があるから、人は自分で考える。

四、ビジネスへの応用

シーン実践ポイント
上司のフィードバック長々と正論を述べるより、「一言で本質を突く」「行動で示す」方が効果的。
マネジメント会議・意思決定部下の意見をまず聞く。議論よりも、全体の納得感を重視する。
研修・教育の場教えすぎず、問いかけで引き出すスタイルをとる。「ティーチングよりコーチング」。
家庭・子育て「叱るより聞く」「正しさより温かさ」を優先し、子ども自身が考える余地を残す。

五、心得のまとめ

● よき言葉でも、多すぎれば毒となる。
● 正論は人を打つ刃にもなりうる。
● 語るより、聴き、示し、待つことのほうが深く伝わる。
● 教えることに酔わず、相手の心の余白を尊重せよ。


目次

🌟結論:言葉の節度こそ、人を動かす力

説教も教訓も、「伝える」ためではなく、「伝わる」ことを目的とすべきです。
伝わるためには、間と空気、距離感とタイミングが鍵になります。

「正しさ」の前に、「謙虚さと慈しみの心」を。
それが、本当に人を導く者の心得です。

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