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重要な比率とその活用法

経営分析を通じて企業の健康状態や課題を把握し、適切な対策を講じるには、いくつかの重要な比率を理解し、それを活用することが欠かせません。

分析の目的を「経営効率」「資金繰り」「運転資金」「蓄積」の4つに絞り、各比率を具体的に見ていきます。

総資本純利益率:経営効率の指標

計算式

総資本純利益率 = 純利益 / 総資本 = (純利益 / 売上高) × (売上高 / 総資本)

この式から、総資本純利益率は「売上高純利益率」と「総資本回転率」の掛け算であることが分かります。

  • 売上高純利益率:売上高に対する利益率の指標。利益を生み出す効率を示します。
  • 総資本回転率:資本を効率的に活用できているかを測る指標。

この関係式により、総資本純利益率を向上させるには、利益率を高めるか、資本の効率的な運用を図る必要があることが明確になります。

固定比率と長期適合率:安定性の指標

固定比率

固定資産 / 自己資本

低いほど望ましい。固定資産が自己資本でどの程度カバーされているかを示し、固定資産の過剰投資や借入依存のリスクを管理します。

長期適合率

固定資産 / (自己資本 + 長期負債)

50%以下が理想的とされます。固定資産が長期的な安定資金で賄われているかを確認する指標です。極端に低い場合は、設備投資不足の可能性も考慮する必要があります。

比率の改善方法と原則

財務比率を改善するための方法は、大きく2種類に分けられます。

資金面で改善可能な比率

  • 資金調達や運用方法の変更だけで改善が見込めるもの。
  • 例:流動比率(流動資産を増やす、流動負債を減らす)。

利益向上が必要な比率

  • 収益性を示す比率は、利益が上がらない限り改善が難しい。
  • 例:売上高純利益率(売上を拡大し、コストを削減する必要がある)。

比率の傾向を把握する方法

比率の推移を視覚的に把握するためには、2期または3期分のデータを比較し、その変化を矢印で示す方法が一般的です。

  • 上昇を示す場合:↗︎
  • 横ばいの場合:→
  • 下降を示す場合:↘︎

この手法により、改善すべき箇所を迅速に見極めることが可能です。

比率別の注意点と適切な基準

1. 流動比率

目安:130%以上が望ましい。
短期的な支払能力を示す指標であり、流動資産と流動負債のバランスが適切かを判断します。

2. 棚卸資産回転率

目安:高すぎると危険。
在庫が過少になると、販売機会を逃したり、急な需要増加に対応できなくなります。適度な在庫水準を維持することが重要です。

3. 自己資本比率

目安:40%以上が望ましい。
資本構造の健全性を測る指標。自己資本が総資本に対してどの程度の割合を占めるかを示します。低すぎる場合は、借入依存が高まるリスクがあります。

比率の悪化に対する対策

固定比率・長期適合率の改善

  • 分子(固定資産)を小さくする:遊休資産の売却や不要資産の処分
  • 分母(自己資本・長期負債)を大きくする自己資本の増強や長期借入金の活用。

流動比率の改善

  • 流動資産を増やす:売掛金の早期回収、余剰現金の確保。
  • 流動負債を減らす:短期借入金の削減や仕入先との支払い条件の見直し。

売上高純利益率の改善

  • 売上高を増やす:新規顧客の獲得や販売促進策の実施。
  • 費用を削減する:製造原価や販売費、一般管理費の見直し。

まとめ

財務比率を用いた分析は、企業の現状を把握し、改善策を考えるための基本的な手法です。比率ごとに適切な基準と改善方法を理解することで、効率的かつ効果的な経営判断が可能になります。特に重要なのは、以下のポイントです。

  • 比率の悪化要因を特定し、それが資金面の問題か利益率の問題かを見極める。
  • 各比率に適切な目標値を設定し、過剰や不足を防ぐ。
  • 比率の変化を継続的にモニタリングし、早期に対策を講じる。

これらのプロセスを通じて、企業は健全で持続可能な成長を実現できるでしょう。

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