■ 引用原文(日本語訳)
愚かな者は、法から逸脱して、なしてはならぬことを実行して、
死魔の支配に屈し、車軸を毀したように、悲しむ。
――『ダンマパダ』第四章「はげみ」第18節
■ 逐語訳(一文ずつ現代語訳)
- 愚かな者は、正しい法(ダルマ)から外れて、
道徳や真理に背き、自分勝手な行動に走る。 - してはならないことを実行してしまう。
禁止されている行為や不道徳な行いを敢えて選んでしまう。 - その結果、死魔(マーラ)の支配に屈する。
煩悩や死の恐怖に取り込まれ、心を完全に支配されてしまう。 - 車軸を壊した者のように、深く悲しむことになる。
心の中心を見失い、破滅の末に激しい後悔が残る。
■ 用語解説
用語 | 解説 |
---|---|
愚かな者(バール) | 真理を知らず、欲望や感情に従って生きる人。 |
法(ダルマ) | 仏教の真理・正しい行動の原理。倫理的・霊的な規範。 |
死魔(マーラ) | 心を堕落させ、悟りへの道を妨げる象徴的存在。死・煩悩・恐れの具現。 |
なしてはならぬこと | 五戒や社会的規範に反する行動。欲・怒り・欺き・不義など。 |
車軸を毀す(アクシャッバンナ) | 精神や人生の中心を壊すこと。自滅・破綻の象徴。 |
■ 全体の現代語訳(まとめ)
愚かなる者は、道理や倫理を無視し、
してはならない行為に手を染めてしまう。
その結果、煩悩や死の恐怖に囚われ、精神の軸を壊し、
最後には深く、取り返しのつかないほどに後悔する。
それは、内なる法を破った者に訪れる当然の帰結である。
■ 解釈と現代的意義
この節は、「法(真理・規律)から外れた行為が、人生を破壊する」という重大な教訓を含んでいます。
目先の欲望や感情に負けて、自分の良心や倫理を裏切るとき、
それは表面上の失敗よりも深く、精神と人格そのものを損なう結果となります。
「死魔に屈する」とは、人生の方向性を見失い、無明(真理の無知)の闇に呑まれる状態です。
そのような行為の先には、必ず「後悔」という重い報いが待っています。
■ ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
コンプライアンス違反 | 知りながら法律や規範を破ったとき、その代償は職を超えて人生に及ぶ可能性がある。 |
判断の一貫性 | 「やってはならない」と分かっていながら妥協すると、信頼と自尊心を同時に失う。 |
リーダーの品格 | 自らの行動がチームや組織の道徳的基盤を作る。破ったときの損失は計り知れない。 |
精神的健康と軸の維持 | 規律や原則に基づかない行動は、内面の崩壊をもたらし、メンタルの不調を招く。 |
■ 心得まとめ
「法を破り、欲に走るとき、心の軸は砕け、後悔の炎が燃え上がる。」
どれだけ表面を取り繕っても、
心の奥で「してはならぬ」と知っていたことを行えば、
その痛みと報いは必ず、自らに返ってくる。
人生を壊すのは他人ではない。
**「法を見失った自分自身」**なのだという教えを、忘れてはならない。
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