目次
🔖 原文(日本語訳)
「すべての愛執を捨てると、すべての束縛を滅ぼすから、
すべての迷いの制約を知りつくして、
もはや再び迷いの生存にもどって来ない。」
――『ダンマパダ』第2章「不放逸品」第33偈
📝 逐語訳
- 愛執(ラーガ):対象(人・物・地位など)に執着して離れられない心の傾向。
- 束縛(サンヨージャナ):輪廻を繰り返させる原因となる心の束縛(十結とも呼ばれる)。
- 迷いの制約(サンサーラ):生死の繰り返し(輪廻)における無明・苦・執着の連鎖。
- 再び戻って来ない:涅槃を得た者は、もはや再生することがない(=完全なる解脱を意味)。
🧩 用語解説
用語 | 意味 |
---|---|
愛執(ラーガ) | 感情・対象への欲着。快楽や関係性への依存心。 |
束縛(結) | 「我」という思い・欲望・怒り・無知など。 |
迷いの生存(サンサーラ) | 苦悩や不満を伴う現象界の存在状態。輪廻転生の流転を指す。 |
知りつくす(パリニャーヤ) | 体験的に真理を悟ること。知識でなく智慧による脱出。 |
🌐 全体の現代語訳(まとめ)
人がすべての執着を手放すと、
心を縛っていたあらゆる鎖(束縛)もまた断ち切られる。
そして迷いと苦しみの連鎖構造を知り抜いた人は、
もはや再び同じような迷いに巻き込まれることがない。
それこそが本当の自由であり、悟りの境地である。
💡 解釈と現代的意義
この偈は、「執着=迷いの根源」であると断言しています。
- 愛することと、執着することは異なる。
執着は「こうあってほしい」「手放したくない」という強迫から生まれ、苦しみを招きます。 - 執着を捨てたとき、人は初めて「何ものにも縛られない心の自由」を得ます。
- 現代においても、人間関係・成果主義・競争・承認欲求など、目に見えぬ「愛執の鎖」に多くの人が縛られています。
- そこから解放されるとは、「やるべきことをしながら、心は自由である」状態を意味します。
🏢 ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 解釈・適用例 |
---|---|
リーダーシップ | 部下や結果への執着を手放したとき、指導者は本来の器を発揮できる。 |
キャリア設計 | 地位や年収への執着を捨てることで、真にやりがいある仕事に向かえる。 |
組織文化 | 結果・評価・比較に縛られた組織より、目的と誠実な行為を大切にする組織は強い。 |
感情管理 | 批判や不安に執着せず、受け流す力を持つことで心の安定と成果が両立する。 |
✅ 心得まとめ
「執着を捨てた者に、もはや迷いは訪れない。」
握りしめている限り、私たちは苦しみから離れられない。
しかし、それを手放したとき――
束縛は消え、心は自由になり、もう同じ苦しみを繰り返すことはなくなる。
それが、仏教の言う「解脱」であり、
**現代における“心の独立”**です。
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