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本当にできる人には、どこか愛嬌がある

達巷(たっこう)の村人は、孔子のことを「何でもできるが、何か一つに秀でているわけではない」と評した。
これは一見、批判のようにも聞こえるが、孔子はむしろそれをおもしろがり、弟子たちの前で少し茶目っ気のある返しをした。
「私も何か専門を決めて有名になろうかな。馬車を操る御者? 弓を射る射手? やっぱり御者にしようかな」——
こうした孔子の姿には、偉大な人であっても柔らかさやユーモアを忘れない「人間味」があらわれている。

厳格な教えを説く一方で、自分を笑いに変える余裕と優しさ。
本当に「できる人」ほど、近寄りがたくはない。むしろ、親しみやすさをまとっている。


原文(ふりがな付き)

「達巷(たっこう)の党人(とうじん)曰(いわ)く、大(だい)なるかな孔子(こうし)。博学(はくがく)にして名(な)を成(な)す所(ところ)無し、と。子(し)之(これ)を聞(き)き、門弟子(もんていし)に謂(い)いて曰(いわ)く、吾(われ)、何(いず)れを執(と)らん。御(ぎょ)を執(と)らんか、射(しゃ)を執(と)らんか。吾(われ)は御(ぎょ)を執(と)らん。」


注釈

  • 達巷(たっこう)…魯の都・曲阜に近い村。孔子の評判が届いていた地。
  • 党人(とうじん)…その村の住人。
  • 博学(はくがく)…広く学んでいること。知識の豊富さ。
  • 御(ぎょ)…馬車を操る技術。古代の実用的な職業技術のひとつ。
  • 射(しゃ)…弓を射ること。礼儀作法や身体鍛錬の一環でもあった。

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