MENU

自分を低く見るのではなく、正しく見て高みを目指す

謙虚に学び、正直に語り、それでも志を捨てない

孔子は、弟子の子貢に「お前と顔回とではどちらが優れているか」と問いかけた。
すると子貢は、「とても顔回には及びません。彼は一を聞いて十を知るほどの人物ですが、私はせいぜい二を知る程度です」と答えた。
この言葉に、孔子は「そのとおりだ。私もお前と同じように顔回には及ばないよ」と、笑みを含んだような調子で応じた。

ここには、自分の能力を冷静に見つめながらも、決して卑下することなく、学びへの熱意と向上心を保つ子貢の態度が表れている。
孔子は、このバランスの取れた謙遜と自負の姿勢を認め、あえて自分も子貢と同じ立場に立つように言うことで、彼を励ましたのである。


原文とふりがな付き引用

子(し)、子貢(しこう)に謂(い)いて曰(いわ)く、女(なんじ)と回(かい)と孰(いず)れか愈(まさ)れる。
対(こた)えて曰く、賜(し)や、何(なん)ぞ敢(あ)えて回(かい)を望(のぞ)まんや。
回や、一(いち)を聞(き)きて以(もっ)て十(じゅう)を知(し)る。賜や、一を聞きて以て二(に)を知るのみ。
子曰く、如(し)かざるなり。吾(われ)、女と与(とも)に如かざるなり。

自分を見誤らず、正しく評価する。
それは謙遜であり、同時に最大の自負でもある。


注釈

  • 子貢(しこう)…孔子門下の才人。知識・弁舌に優れ、商才にも富んでいた。
  • 顔回(がんかい)…孔子が最も高く評価した弟子。学問・人格ともに優れていたが、早世した。
  • 一を聞いて十を知る…極めて理解力・洞察力が高いことのたとえ。
  • 如かざるなり(しかざるなり)…及ばない、劣っているという意味だが、孔子の言い回しには子貢を認め励ます含みがある。
  • ※「吾、女と与に如かざるなり」は「私もお前と一緒で顔回には及ばないよ」と共感を示す含意がある。
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次