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固定費をどう捉えるべきか

固定費を単なる“費用”として捉え、“費用は少なければ少ないほど良い”といった短絡的な考え方は誤りです。

では、固定費をどのように理解し、扱えば良いのでしょうか。費用とは本来、事業経営における必要性に基づいて使われるものであり、その性質を正しく理解することが求められます。

目次

費用の特性とその理解

費用が事業経営にプラスになるか、マイナスになるかを見極めるには、以下の2点を重視する必要があります:

  1. 費用の特性を理解する
    費用とは、収益に比例して発生するものでもなければ、費用をかけた分だけ収益が得られるものでもありません。費用が発生する主な要因として、“社内での人々の活動状況”と“投下された資本”が挙げられます。
  2. 費用の投下先を正確に認識する
    費用が具体的にどのような活動や部門に投下されているのかを理解することで、経営上の効果を正確に把握できます。

例えば、収益性の高い部門や商品に投入される人件費と、収益性の低い部門や商品に投入される人件費は、収益とは無関係に発生します。

そのため、収益性が高い場合の人件費は相対的に割安になり、収益性が低い場合は割高になります。

同じように、店舗維持費や配送費も、売上高や収益ではなく、物理的な要因(空間の容積や走行距離など)によって発生します。

ABC分析による課題の発見

費用の特性を最も象徴的に示しているのが、商品別および得意先別の売上高を分析するABC分析です。この分析では、“全商品の半数または得意先の半数が売上高の95%”を占め、“残りの半数は売上高の5%”しか生み出していないという現実が明らかになります。

さらに驚くべきは、売上高の下位5%に該当する商品や得意先にも、全体の30%–40%もの販売費が割かれていることです。この不均衡が、経営者にとって大きな課題として浮き彫りになります。

営業活動の非効率性

得意先別売上高ABC分析表に、セールスマンの訪問回数を重ね合わせると、営業活動の非効率性がさらに明確になります。例えば:

  • 重要な得意先にはあまり訪問せず、売上規模の小さい得意先を頻繁に訪問している。
  • 売上高下位5%の得意先に多くの時間が割かれている。

これらは、経営トップの指針が曖昧であるがゆえに、現場の優先順位が誤っていることを示しています。営業戦略の見直しとセールスマンの行動方針の明確化が急務です。

固定資産投資のリスク

固定資産投資もまた、慎重な判断が求められる費用項目です。例えば、新社屋や福利厚生施設への投資は、短期的な満足感を得られる一方で、以下のリスクを伴います:

  1. 損益分岐点の上昇
    固定費の増加により、収益が一定水準を下回ると赤字になりやすくなります。
  2. 経営の柔軟性の低下
    固定資産が増えることで、顧客ニーズや市場変化に迅速に対応する力が弱まります。
  3. 設備の陳腐化リスク
    技術革新や市場の変化により、投資した設備が無用の長物になる可能性があります。

費用の三分類と管理

費用を効果的に管理するためには、その性質に応じて分類し、それぞれに適した方針を策定することが重要です。以下の三分類が有効です。

  1. 管理的費用
    日常業務の維持に必要な費用であり、事務経費や人件費、設備維持費などが該当します。
  2. 販売促進費
    売上を拡大するための費用であり、広告宣伝費や営業活動費が含まれます。
  3. 未来事業費
    将来の成長を目指す投資的な費用であり、研究開発費や新規事業準備費用、社員教育費が該当します。

まとめ

固定費やその他の費用を単なる“削減対象”として扱うのではなく、その特性や役割を理解し、効果的に管理することが重要です。

適切な費用配分と管理を通じて、企業全体の収益性と成長性を向上させることが可能となります。本質的な経営改善を目指し、費用を戦略的に活用する視点を持つことが、持続可能な経営の鍵となるでしょう。

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