最初に押さえておきたいのは、「商品ごとの総原価は計算できない。算出可能なのは商品ごとの収益である」という点です。
原価病からの脱却
多くの企業では「原価を知りたい」という強い要望がありますが、商品別原価を正確に計算することは現実的に不可能です。
かつて開催した「増収増益戦略セミナー」でもこの点を強調しましたが、一部の参加者は依然として「原価を把握する方法」を求めていました。
この姿勢は、いわゆる「原価病」と呼ばれる現象の典型例です。原価に固執することは、商品の収益力や市場での競争力を見失う危険性を伴います。
そのため、経営者は原価よりも収益に焦点を当てるべきです。
商品収益性を把握するためのフレームワーク
商品収益性を分析する際には、付加価値と工数を基に賃率を計算することが重要です。この賃率は、実際の状況を反映した「実際賃率」を用いるべきです。また、商品をランク分けすることで、効率的な管理が可能になります。
商品ランクの分類例
- Aランク: 健康商品(高収益・高成長の期待商品)
- Bランク: 貧血商品(収益が安定しているが成長が見込めない商品)
- Cランク: 出血商品(低収益または赤字商品)
さらに、ランクごとに「AA」「A」「C」「D」といった細分化を行い、具体的な行動方針を記入することが推奨されます。
行動方針例
- 販促強化
- 値上げ
- 値下げ
- 成り行き
- 切り捨て
これらの方向性を定めることで、収益力の高い商品にリソースを集中し、効率的な経営判断が可能となります。
商品管理の実践方法
商品管理を効果的に行うためには、以下の点を押さえることが重要です。
- 年1回の見直し: 年に一度、商品ごとの収益性を分析し、設計変更や売価変更があった場合のみ更新を行います。
- 変動要因への対応: 材料費の変動など、些細なコスト変動には過度に反応せず、収益力に注目します。
- 重要性の判断: 「Aランク」商品に優先的に注目し、売上増加の機会を積極的に追求します。
社長の役割
商品収益性を最大化するためには、社長自身が積極的に顧客の声を聞き、競合他社の動向を把握することが必要です。
デスクにこもったままでは、正確な経営判断は下せません。
「外に出る」重要性
多くの社長が外部との接触を避ける傾向にありますが、これでは情報不足に陥り、効果的な戦略を立てることができません。実際に外に出た社長からは、「外部との交流で新たな発見があった」「市場の実態を初めて理解できた」といった声が多く聞かれます。
結論
商品収益性を把握することは、経営の根幹を支える重要な要素です。原価にとらわれるのではなく、収益力や将来性を基に判断を行い、収益性の高い商品に集中する戦略が必要です。
また、社長自身が市場の動向を把握し、積極的な経営判断を行うことで、企業全体の競争力を向上させることができます。
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