ある土産菓子の専門メーカーがあった。売上が伸び悩み、赤字続きで経営が苦しいという話を聞き、早速訪問して商品を確認することにした。机の上にすべての商品が並べられる。その光景を見た瞬間、「これは問題だ」と直感的に思った。
容器のデザインがまったく洗練されていなかった。そのため、まずはデザインの全面的な見直しを提案した。ただし、一度に全商品を変更するのではなく、最初に1つか2つを新デザインに切り替えて試験的に販売することを勧めた。結果が良ければ他の商品も順次切り替え、反応が悪ければ速やかに撤退する。このように、慎重かつ段階的に進めることの重要性を強調した。
商品の中に、最近容器を変更したことで売れ行きが激減したものがあった。その商品は以前、プラスチック製の箱に透明なフタが付いたデザインだった。しかし、コスト削減のため容器を紙製に変更したという。変更の結果、商品の魅力が大きく損なわれ、売上が大幅に落ち込んでしまったのが原因だと見られた。
現物を手に取って確認した瞬間、「これでは売れるはずがない」と直感した。その新しい容器は中身が見えない仕様になっていた。しかも商品名は凝っているものの、それだけでは中身が何なのか全く伝わらない。消費者にとって中身が不明の商品は不安要素でしかなく、購入を促せるわけがない。このデザイン変更は、顧客目線を完全に無視したものだったと言える。
こんな初歩的なことが理解できないようでは、商売として成り立つはずがない。そこで、容器のデザイン自体はそのままにして、まずは上面だけでも透明な素材に変更するよう提案した。これにより中身が見えるようになり、少なくとも消費者の不安を和らげ、商品の魅力を伝えられるようになると考えた。
その結果、売上は見事に元の水準まで回復した。一方で、ある家具店から「客寄せのために子供用の三輪車を店先に並べてみてはどうか」と提案されたことがあったが、即座に否定した。「馬鹿げた話だ。家具店に来る客層は、子供連れが中心ではない。目的や顧客層を無視したアイデアは逆効果になるだけだ」と強く伝えた。
婚礼家具を目当てに来るのなら、母娘連れか、婚約者同伴で来るのが普通だ。応接セットを買いに来る場合は、夫婦で訪れるのが一般的だ。そういった顧客層を無視したピント外れの発想は無駄だと断言した。代わりに、家具そのものの売れ筋商品をしっかりと研究することを提案した。
さらに重要なのは、「何でも揃います」というような万屋的な姿勢を捨てることだ。重点商品を明確に定め、それらを充実した品揃えで展開することで、店舗の独自性と魅力を高めるべきだと強くアドバイスした。
婚礼家具を目当てに来るのなら、母娘連れか、婚約者同伴で来るのが普通だ。応接セットを買いに来る場合は、夫婦で訪れるのが一般的だ。そういった顧客層を無視したピント外れの発想は無駄だと断言した。代わりに、家具そのものの売れ筋商品をしっかりと研究することを提案した。
さらに重要なのは、「何でも揃います」というような万屋的な姿勢を捨てることだ。重点商品を明確に定め、それらを充実した品揃えで展開することで、店舗の独自性と魅力を高めるべきだと強くアドバイスした。
ある風呂釜メーカーが、本社の立地条件を活かして表通りに面した場所をショールームにしようと提案してきた。しかし、そもそも風呂釜という商品は、通行人が立ち止まって眺めるような性質のものではない。その考え自体が現実とかけ離れており、効果が期待できないことは明らかだった。
人間は、自分の関心がないものには目を向けようとしないものだ。風呂釜は日用品のように自発的に見て回る「買廻り品」ではなく、基本的には業者からの提案や勧めによって購入が決まるものだ。わざわざ街へ出て風呂釜を見ようと考える人など、まずいない。こうした発想は、顧客の視点を欠いた「自己満足」に過ぎない。
K市の第一商店街、それも角地という絶好の立地条件にある洋品店があった。しかし、小型店であるにもかかわらず、大きなショーウインドを設けた結果、店内への入口がわずか1メートルほどの狭さになっていた。この設計では客足が遠のくのは当然だと思いながら、通りかかるたびに店内を覗いてみたが、いつもお客様の姿は見当たらなかった。売れない理由は明白だった。
一流商店街にある店として、いくら小型店とはいえ、このレイアウトはあまりにひどいと思った。そして案の定、その店は二年ほどで店じまいを迎えてしまった。
その後、新しく入った同じ洋品店は、ショーウインドを奥行き方向に長く取り、小さめに改造して入口を広くした。結果として、店の雰囲気が開放的になり、通行人が入りやすい構造となったことで、お客様が次々と足を運ぶようになった。その店は現在まで二十年以上も続き、繁盛店としての地位を確立している。
商品販売において、特に重要なのは「衝動買い」をするお客様の存在だ。そのためには、何よりもまずお客様が店内に入り、商品を目にしてもらうことが最優先となる。入口が広ければ、店内の様子が外から見やすくなり、心理的なハードルも下がるため、自然と入りやすくなる。結果として、お客様が立ち寄る機会が増え、購買につながる可能性も高まるのだ。
小型店にもかかわらず、デパートの真似をして大きなショーウインドを設けるのは間違いだ。デパートのお客様は、そもそも目的地としてデパートを目指してやって来る。さらに、常に多くの人が出入りしているため、心理的なハードルも低く、気軽に足を踏み入れやすい環境が整っている。
そのため、デパートでは入口が多少狭くても問題にならない。お客様の出入りに支障が出なければそれで十分だ。しかし、小型店の場合は事情が違う。お客様を引き込むには入口の広さや店内の見えやすさが重要で、デパートのような条件は当てはまらないのだ。
小型店舗はデパートとは根本的に異なる。狭い入口では、通りすがりのお客様が心理的な抵抗を感じて入りにくいという現実を理解する必要がある。デパートには「目的買い」をするお客様が多いが、小店舗では「衝動買い」や「ついで買い」を狙うことが中心となる。
そのため、メーカーや流通業者は、お客様がどのように商品を選び、購入に至るのかをしっかりと研究しなければならない。例えば、店の外観や入口の広さ、商品の見せ方が「立ち寄ってみよう」という気持ちにさせるかどうかが重要だ。また、買い物のプロセスがスムーズで心地よいものになっているかも、成功の鍵となる。お客様の動線や心理を無視した店作りでは、競争に勝てるわけがないのだ。
エンドユーザーは品質に不安を感じ、流通業者は売り込みが難しい。それにもかかわらず、「新商品はアイデア商品」という神話のもと、実績のない商品をアイデア商品として売り出そうとしている。
アイデア商品が必ずしも売れないわけではないが、売り方には工夫が必要だ。顧客の研究を欠いたところに販売促進はあり得ない。この基本的な原則を踏まえることが、事業を成功に導く鍵であることを忘れてはならない。
タイトル:顧客はどんな買い方をするのか—消費者心理を理解した販売戦略の重要性
顧客がどのように商品を購入するかを理解することは、成功する販売戦略を立てる上で不可欠です。商品を売る際には、顧客の視点に立って「どのように商品が選ばれるか」「どのような買い方をするのか」を研究しなければなりません。以下は、さまざまな事例を通じて、顧客の購買行動を理解し、それに応じた戦略を考えるポイントです。
1. 顧客が「中身を見て」購入する商品
ある菓子メーカーでは、容器の透明部分がなく中身が見えないことで販売不振に陥りました。容器を透明にし、中身が見えるようにすることで、売上が回復しました。この例が示すのは、商品が消費者にとってどのように見えるかが購買行動に大きな影響を与えるということです。特に消費者が「中身を見て購入する」商品は、商品がどのように見えるかが購入の大きな決め手になります。
2. 顧客のターゲットに合わせた見せ方
例えば家具店が客寄せのために子供用の三輪車を店頭に置こうとした例では、家具を見に来る顧客層と商品がミスマッチでした。婚礼家具や応接セットを求める顧客層には、子供向けの商品を見せても意味がありません。ターゲットとなる顧客がどのような商品を見たいかを理解し、魅力的な展示や見せ方を工夫することが重要です。
3. 実績や信用のある商品が選ばれる
新商品や実績のない商品は、特に流通業者や消費者にとってリスクが伴います。商品を市場に出す前に一定の信頼や実績を積み、顧客にとっての安心感を提供することが大切です。新しいアイデア商品が必ずしも成功するとは限りません。新商品を売り込む際には、その魅力をしっかり伝え、消費者に「価値がある」と感じてもらう工夫が求められます。
4. 顧客が「入りやすい」店舗作り
顧客がふと立ち寄りやすい店舗作りも、購買行動を促進する重要な要素です。狭い入口や入りづらいレイアウトは、小型店舗での売上低下につながります。特に「衝動買い」が期待されるような商品は、顧客がふと立ち寄りやすい店舗作りが必須です。デパートや大型店舗と異なり、小型店舗は入口を広くして入りやすくするなど、実店舗ならではの工夫が重要です。
結論
顧客がどのように商品を選び、買うかを深く理解することは、販売戦略を成功させる上での基盤です。購買行動に基づいたアプローチを取ることで、企業は顧客に訴求することができ、結果として売上増加につながります。顧客の視点に立った戦略こそ、事業成長の鍵と言えるでしょう。
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