ある人が、由緒ある「禘(てい)の祭り」の意味を孔子に尋ねたとき、孔子は一見こう答えた――「私にはわからない」と。
だがそれは、祖国・魯の非礼を正面から批判したくないという配慮に満ちた沈黙であった。
孔子は続けて、「もしその本質を理解する者が天下を治めれば、それはまるで手のひらに示された物を見るように、明快に世の中をまとめられるだろう」と言い、その手のひらを指し示した。
しきたりや礼の根本を理解し、それに従える人物こそが、真に国を導く力を持つ。表面的な模倣では、天下は動かない。
「知らざるなり。其(そ)の説(と)きを知(し)る者(もの)の天下(てんか)に於(お)けるや、其れ諸(これ)を斯(ここ)に示(しめ)すが如(ごと)きか」と。その掌(たなごころ)を指(ゆび)せり。
しきたりを知るとは、形を守ることではなく、その背後にある本質をわきまえることである。
※注:
- 「禘(てい)」…天子が祖先を祀る最も格式高い祭礼。
- 「不知」…文字通り「知らない」と答えるが、ここでは政治的・道徳的配慮からの婉曲な回答。
- 「掌(たなごころ)」…手のひら。明確で見通しがよく、はっきりと理解される様を象徴。
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