孔子は、真に志を持った人や仁徳ある人物についてこう語った。
「命を惜しんで仁を捨てるようなことはしない。
むしろ、自らの命を捨てても、仁の道を守ろうとするのが彼らだ」と。
ここで説かれるのは、ただの自己犠牲ではない。
それは、「仁」という、人として守るべき道・信義・誠の心を、命よりも大切にするという姿勢である。
命をかけてでも守る価値のあるものがある。
それがあるからこそ、**志士(しし)や仁人(じんじん)**は、人々の尊敬を集めるのである。
原文とふりがな
「子(し)曰(い)わく、志士(しし)、仁人(じんじん)は、生(せい)を求(もと)めて以(もっ)て仁(じん)を害(そこ)なうこと無(な)く、身(み)を殺(ころ)して以(もっ)て仁(じん)を成(な)す有(あ)り」
注釈
- 「志士(しし)」:仁を学び、世の中に貢献したいという志を持った人物。自分の利益や保身よりも理想を重んじる人。
- 「仁人(じんじん)」:すでに仁徳を身につけた人。思いやり、誠実さ、公正さなどを兼ね備えた人格者。
- 「生を求めて仁を害する」:命を惜しみすぎて、自らの信義・徳を曲げてしまうこと。
- 「身を殺して仁を成す」:自らの命を犠牲にしてでも、仁の道を貫くこと。義を守る精神の表れ。
パーマリンク候補(英語スラッグ)
honor-over-life
(命よりも名誉)sacrifice-for-virtue
(徳のための犠牲)live-for-ren
(仁のために生きる)
この心得は、現代においても信念を貫く覚悟、命より大切な価値とは何かを問うものです。
組織や個人の判断が試される局面において、道を外さぬための指針となる言葉です。
1. 原文
子曰、志士仁人、無求生以仁。有殺身以成仁。
2. 書き下し文
子(し)曰(いわ)く、志士(しし)・仁人(じんじん)は、生(せい)を求(もと)めて以(もっ)て仁(じん)を害(そこな)うこと無(な)く、身(み)を殺(ころ)して以て仁(じん)を成(な)すこと有(あ)り。
3. 現代語訳(逐語/一文ずつ)
- 「子曰く、志士・仁人は」
→ 孔子は言った。「志を抱く者や仁徳ある人物は──」 - 「生を求めて以て仁を害することなく」
→ 「生き延びるために、仁(=道徳や人間としての誠実さ)を損なうようなことはしない」 - 「身を殺して以て仁を成すこと有り」
→ 「むしろ命を捨ててでも、仁を実現しようとすることさえある」
4. 用語解説
- 志士(しし):志(こころざし)を持ち、道義のために行動する人。理想を追求する人物。
- 仁人(じんじん):仁の徳を備えた人物。誠実さ・思いやり・倫理観を持つ人格者。
- 仁(じん):孔子が最も重視した徳。人への思いやり、公正、誠実などを含む包括的な倫理観。
- 成仁(せいじん):仁を実現し、徳のある人格を完成させること。
- 殺身(さっしん):自らの命を犠牲にすること。転じて「自己犠牲」全般を指す。
5. 全体の現代語訳(まとめ)
孔子はこう言った:
「志ある人、仁徳のある人は、命を惜しんで仁の道を損なうことはしない。
むしろ、仁を全うするためならば、自らの命を投げ出すことさえあるのだ」。
6. 解釈と現代的意義
この章句は、**「命を惜しむより、信念と徳を貫くことを尊ぶ」**という、強い倫理的・哲学的姿勢を示しています。
- 孔子は、「生きることそれ自体より、どう生きるかが重要だ」と考えていました。
- 特に、仁の実践──誠実さ、他者への配慮、倫理的な判断──を犠牲にしてまで命を長らえることは、「真の生」とは言えないとしたのです。
- 極限の状況下においても、“正しさ”を貫く者こそ、志士・仁人の姿であると讃えています。
7. ビジネスにおける解釈と適用
◆ 「信念と誠実さは、何よりも優先される価値」
短期的な利益や自己保身のために、誠実さを犠牲にしてはいけない。倫理を曲げる成功は、真の成功ではない。
◆ 「信頼は“命を懸ける覚悟”から生まれる」
顧客や仲間のために、自分の立場や評価を賭けてでも貫く行動こそが、本物のリーダーシップ。それが信頼の核になる。
◆ 「損得ではなく、“徳得”で判断せよ」
「自分が得するか」ではなく、「この判断は人間として正しいか(=徳にかなっているか)」で判断する思考を鍛えるべき。
◆ 「仁=思いやりと誠実さを守る覚悟」
時に不利益を被ろうとも、“仁”を守る生き方は、最終的に人と組織を救う。
8. ビジネス用心得タイトル
「誠を貫く覚悟──仁のために身を賭す者が信頼を得る」
この章句は、「なぜ働くのか」「どのように生きるのか」という根源的な問いに、孔子の明確な答えを与えています。
リーダーシップ倫理、危機時の判断軸、人材評価の基準としても非常に力強いメッセージを持ちます。
コメント