家庭の中には、一人ひとりの真心によって生まれる“本物の仏”が存在し、
日常の生活には、真実の道が息づいている。
それは、父母や兄弟との関係において、誠意と和気を持ち、
穏やかな顔つきと優しい言葉で接し、
家族全体が心身共に調和した一体感を持って生きることによって実現される。
このような家庭の在り方は、難解な道教の呼吸法や仏教の坐禅修行にまさる、
何万倍もの価値ある修行なのである。
「家庭(かてい)に個(いっこ)の真仏(しんぶつ)有(あ)り、
日用(にちよう)に種(しゅ)の真道(しんどう)有り。
人(ひと)能(よ)く誠心和気(せいしんわき)、愉色婉言(ゆしょくえんげん)もて、
父母兄弟(ふぼけいてい)の間(あいだ)をして、形骸(けいがい)両(ふた)つながら釈(と)け、
意気(いき)交(まじ)ごも流(なが)れしめば、調息観心(ちょうそくかんしん)に勝(まさ)ること万倍(まんばい)なり。」
注釈:
- 真仏(しんぶつ)…形式ではなく、心の内に生まれる本物の仏。家庭の中での真実の存在。
- 真道(しんどう)…真理の道。毎日の暮らしの中にこそ、真の修行があるという教え。
- 誠心和気(せいしんわき)…真心と穏やかさ。誠実で調和した人間関係を築く基本。
- 愉色婉言(ゆしょくえんげん)…にこやかな表情と優しい言葉づかい。
- 形骸両つながら釈け(けいがいふたつながらとけけ)…身体と精神がともに溶け合い、一体化して調和している状態。
- 調息観心(ちょうそくかんしん)…呼吸を整えて気を養う道教の修行法と、心を観じて真理を求める仏教の瞑想法。
コメント