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■引用原文(日本語訳)
「オーム(聖音)、タット(『それ』)、サット(実在、善)は、ブラフマンを指示する三種の語であると伝えられる。これにより、かつてバラモンとヴェーダと祭祀とが創造された。」
――『バガヴァッド・ギーター』第17章 第23節
■逐語訳
「オーム」「タット」「サット」という三つの神聖な言葉は、
絶対的実在(ブラフマン)を表す語として知られている。
古代において、これらの語によって、
バラモン(聖者)、ヴェーダ(聖典)、祭祀(ヤッニャ)が生み出された。
■用語解説
- オーム(ॐ):宇宙の根源音であり、神(ブラフマン)そのものを象徴する聖音。すべてのマントラの始まり。
- タット(TAT):「それ(汝ではない)」という意味で、神聖な対象にすべてを捧げることを示す。自己の所有や執着を否定。
- サット(SAT):「実在・真実・善性」を意味し、純質的行為や存在の真価を示す。
- ブラフマン:宇宙の根源的原理・最高存在。あらゆる存在・知識・行為の背後にある絶対者。
- バラモン・ヴェーダ・祭祀:宗教的秩序の中核を担う三要素。知識・信仰・実践の三位一体。
■全体の現代語訳(まとめ)
「オーム」「タット」「サット」という三つの神聖な語は、
宇宙の根源であるブラフマンを象徴しており、
この聖なる言葉によって、聖典の伝統、聖職者の使命、そして神への供犠という精神文化が生み出された。
それは、人間と宇宙と神とを結ぶ、言葉の根源的力を象徴するものである。
■解釈と現代的意義
この節は、「言葉には創造の力がある」というインド哲学の根幹を語っています。
オーム=宇宙の響き、タット=私を超えた存在への帰属、サット=実在としての善。
この三語は、**「なぜ行うのか」「誰に捧げるのか」「どのように生きるのか」**という人生の根本的態度を示すものであり、宗教・学問・行為のあらゆる基盤に深く関わっています。
現代においても、「言葉が現実をつくる」「語りによって文化が生まれる」ことの象徴として受け止めることができます。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
理念と言葉の力 | 組織理念やブランドステートメントは、「言葉」が人と人、行為と目的をつなぎ、秩序を生むことを示している。 |
動機と目的の確認 | オーム=全体との一体感、タット=私心なき献身、サット=誠実と善。これらは、組織活動の背後にある「精神性」を問う指標となる。 |
文化創造としての言葉 | 社内用語や行動指針など、日々の「使う言葉」こそが組織文化を形づくる。聖なる語のように扱うべきキーワードを持つことが重要。 |
パーパス経営と一致 | 「なぜこの事業をするのか」を言語化することは、タットとサットの実践。志と価値に基づいた言葉が社員の心を結びつける。 |
■心得まとめ
「聖なる言葉は、秩序と信念を創る根源である」
オーム・タット・サット――それはただの語ではない。
宇宙と人間と行為をつなぐ“原理と言霊”であり、すべての道徳と実践の礎である。
ビジネスにおいても、価値ある言葉・理念・信条を育むことが、組織の魂を創り出す第一歩となる。
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