最初に必要なのは、能率至上主義を手放し、効率を重視する方向へ切り替えることだ。どれだけ生産性が高くても、作られる製品が利益を生み出さなければ意味がない。
だからこそ、収益性の高い製品を選んで受注するべきだという話になる。とはいえ、収益性の高い製品といっても、多量生産される消費財にはあまり期待できない。実際、収益性が見込めるのは生産財だ。しかし、生産財は数量がまとまりにくいという問題がある。ここが見落とされがちなポイントだ。
戦後の経済拡大は、生産財の数量そのものを大きく押し上げた。それに加え、寡占化が進んだ結果、以前は特定メーカーの月産数や一ロットが一桁台だったものが、今では二桁に達するケースも珍しくない。たとえば、月産が200台程度の製品であれば、この規模はもはや少なくない水準であり、量産技術が十分に活用できる段階に入っている。
もし2か月分をまとめて生産すれば400個となり、1台あたりに必要な部品が2個や4個ある場合、それぞれ800個や1600個といった数量になる。月産400個や800個の製品でも、2か月分を一度に生産すればこうしたまとまった数に達する。このレベルに至れば、量産技術を十分に活用できる規模と言える。
しかし、生産財のメーカーは多量生産の技術に馴染みが薄く、その結果、少量生産に適した設計や加工法を採用している場合が多い。そのため、部品の単価も比較的高めに設定されている。ここが狙い目というわけだ。この場合、重要なのは価格の見積りだ。量産方式を前提にした見積りを行う際、数量の少なさを理由に価格を上乗せするような手法を取ってはいけない。こうしたやり方では、原価主義的な量産見積りのクセが出てしまい、魅力のない価格設定に陥ることになる。
まずは、受注しようとする部品の現在の市場価格を把握することから始める。そして、その価格より5〜10%安い水準での収益性を試算し、十分な利益が見込める場合には、その価格に基づいて見積書を作成する。収益性が低い場合は、相手に指値を提示してもらい、その金額で再度収益性を検討し、適切な返答を行う。
また、VA(価値分析)によってコスト削減が可能な場合は、削減分の3分の1を価格に反映させるようにする。この際、「適正利益率」という固定観念に縛られず、市場の実態や競争条件に応じた柔軟な価格設定を行うという方針を明確に打ち出した。
高収益受注戦略:効率主義による収益性向上への転換
S社が抱えてきた課題を解決するためには、「能率至上主義」を捨て、効率主義に転換することが重要です。単に能率的に生産しても、収益性が低い製品では利益を確保できません。そこで、S社は収益性の高い製品、特に生産財の受注を強化する方針を採るべきです。
生産財は従来少量生産が主流でしたが、戦後の経済拡大によって需要が拡大し、数量が増加してきています。現在では、月産200台以上の生産財も多く存在し、さらに2か月分を一度にまとめて生産することで、400台、800台と量産効果が発揮できる規模になります。S社がこの市場において、効率的な量産技術を駆使することでコスト競争力を持つことが可能です。
生産財メーカーは依然として少量生産に慣れているため、部品単価が割高です。S社の量産技術を活用してこのニーズに応えれば、高収益の見込みが立ちます。しかし、重要なのは価格見積りの戦略です。以下のポイントに従い、効率を重視した見積りを行うべきです。
- 現在価格を調査し、競争力のある価格設定
受注を検討する部品の現在価格を調べ、これより5〜10%低い価格で収益性がどの程度向上するか検討します。収益性が高い場合、その価格に基づき見積りを作成します。 - VA(Value Analysis)を活用したコスト削減
VAによってコスト削減が可能な場合、その削減分の三分の一のみを値下げに反映し、残りは利益として確保します。これにより、単なる「適正利益率」に惑わされることなく、S社が収益を確保する戦略を堅持できます。
この受注作戦によって、S社は単に生産性を上げるだけでなく、収益性の高い製品を効率的に取り込むことで、会社の財務基盤を強化することが期待できます。この戦略の実行は、企業の持続可能な成長を確実にするための転換点となるでしょう。
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