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権威と秩序を生む階層制――周の爵位制度の合理性

孟子が伝える「周の爵位制度」は、天下の統治と封建秩序の枠組みを支える階層構造を示している。
大きく分けて二種類の「位(くらい)」がある:

  • 天下レベルの五等爵(天子〜諸侯)
  • 国内レベルの六等官(君〜士)

これにより、外的な封建秩序(天子と諸侯)と、国内行政秩序(国の内部階級)が体系的に構築されていた。
孟子は、失われつつあるこの体系の概要(略)を記憶しており、ここで整理して伝えている


原文と読み下し

天子(てんし)一位(いちい)、公(こう)一位、侯(こう)一位、伯(はく)一位、子・男(し・だん)同(おな)じく一位、凡(およ)そ五等(ごとう)なり。

君(くん)一位、卿(けい)一位、大夫(たいふ)一位、上士(じょうし)一位、中士(ちゅうし)一位、下士(かし)一位、凡そ六等(ろくとう)なり。


解釈と要点

■ 五等爵(天下の封建階級)

これは土地を封じられる「諸侯」の階級構造である。

名称概要
1天子(てんし)天下の君主(周王)
2公(こう)最上位の諸侯。例:魯公、晋公など
3侯(こう)公に次ぐ諸侯。例:燕侯、斉侯など
4伯(はく)中堅の諸侯。例:宋伯、曹伯など
5子・男(し・だん)最下位の諸侯。子は殷の王族の名残。
  • ※子と男は合わせて一等とされている(地位としてはほぼ同格)。
  • ※日本の明治憲法下の華族制度(公侯伯子男)も、これをもとに採用された。

■ 六等官(国内の階級秩序)

これは一つの国の内部における官僚や身分秩序を表す。

名称概要
1君(くん)一国の主。天子でない場合、諸侯
2卿(けい)上級貴族。政策決定レベル
3大夫(たいふ)中級官僚。実務担当の重臣
4上士(じょうし)武人・技術者など上位の士人
5中士(ちゅうし)中堅の士分。教養・行政能力が求められる
6下士(かし)士族の下層。時に軍役や雑務を担う

この六等級により、一国の内部組織に上下の明確な基準が与えられていた


注釈

  • 天子(てんし):周王朝における王。全諸侯の頂点に立つ。
  • 諸侯(しょこう):周王より土地を与えられた国の君主。王朝の地方支配を担う。
  • 卿・大夫・士:諸侯の家臣たち。職務と家柄によって上下がある。
  • 「位」とは:身分階級、もしくは役職の段階を示す言葉。社会秩序を支える中枢概念。

パーマリンク(英語スラッグ)

hierarchy-of-zhou
→「周の階層構造」を簡潔に示したスラッグです。

その他の案:

  • five-noble-ranks(五等爵の構造)
  • internal-six-ranks(六等官の制度)
  • structure-of-order(秩序の構造)

この章は、「失われたが、かつて存在した明確な社会秩序」を孟子が口述で再構築した貴重な記録です。
制度は道徳だけでなく、現実の支配秩序にも根ざすものであり、その可視化こそが統治の要であったことがわかります。

目次

原文

天子一位、公一位、侯一位、伯一位、子・男同一位、凡五等也、君一位、卿一位、大夫一位、上士一位、中士一位、下士一位、凡六等。


書き下し文

天子(てんし)一位(いちい)、
公(こう)一位、
侯(こう)一位、
伯(はく)一位、
子(し)・男(だん)同(おな)じく一位、
凡(およ)そ五等(ごとう)なり。

君(くん)一位、
卿(けい)一位、
大夫(たいふ)一位、
上士(じょうし)一位、
中士(ちゅうし)一位、
下士(かし)一位、
凡そ六等(ろくとう)なり。


現代語訳(逐語/一文ずつ訳)

  • 天子には一つの位(地位)がある。
  • 「公」「侯」「伯」「子」「男」もそれぞれ一つの位を持ち、合わせて五等の爵位がある。
  • 一方、君・卿・大夫・上士・中士・下士にもそれぞれ一つずつの地位があり、全部で六等の官位がある。

用語解説

  • 天子(てんし):天下の王。周王朝における最高君主であり、諸侯の上に立つ。
  • 公・侯・伯・子・男(こう・こう・はく・し・だん):古代中国における爵位制度の五等爵(五等諸侯)。この順に位が高い。
  • 君(くん):一国の支配者、または君主号を持つ者(※時代・文脈により異義あり)。
  • 卿(けい):上級官僚であり、国政を担う高官。
  • 大夫(たいふ):中級の貴族層で、卿の下に位置する。
  • 上士・中士・下士(じょうし・ちゅうし・かし):武士階級、または地方行政に携わる実務者。士族の内部階層。

全体の現代語訳(まとめ)

古代中国の制度では、爵位には「天子」「公」「侯」「伯」「子・男」の五等があり、これは貴族的・封建的な地位を示す分類である。

また、行政機構の中では「君」「卿」「大夫」「上士」「中士」「下士」の六等級が存在し、これは実務・官僚的な等級制度である。

このように、爵位(地位)と官位(職務)は並列的に分かれており、それぞれの階級に明確な序列があった。


解釈と現代的意義

この章句は、古代中国の封建制度・官僚制度の階層的構造の明示であり、政治的秩序・社会組織の基本理念を表しています。

  • 社会秩序は上下関係・明確な序列によって保たれていた。
  • 爵位は「血筋・出自・領地」に基づき、官位は「能力・職能・任命」に基づく。
  • それぞれに応じた役割と責任があり、無秩序な上下関係の崩壊を防いだ。
  • 孟子の時代には、こうした制度が崩れ、再整備の必要性が叫ばれていた背景がある。

ビジネスにおける解釈と適用(個別解説付き)

  • 「役割と位階の明確化」
     → 組織の階層や役職・責任範囲が曖昧であると、業務が混乱しやすい。古代制度のように明確な区分は現代でも重要。
  • 「血統的な役割(爵位)と、能力による職能(官位)」の分離
     → 家族企業などでは「生まれの序列」と「仕事の能力・成果」が混在しがち。それらを分けて評価する視点が必要。
  • 「統治構造は秩序により保たれる」
     → 権限と責任の範囲が整理されていれば、リーダーシップやガバナンスの機能が発揮されやすくなる。
  • 「組織階層の設計は、単なる上下関係ではなく、機能と目的に基づくべき」
     → 上司・部下の関係性は、敬意と権限のバランスで成り立つもの。古代の制度はその原型を示している。

ビジネス用の心得タイトル

「秩序が機能を育て、序列が責任を育む──現代組織に活かす階層設計」


この章句は、現代の組織論やガバナンス設計にも通じる「明確な役割分担と責任の体系化」の原則を教えてくれるものです。

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