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■引用原文(日本語訳)
七*
人が吉祥草の葉の尖で臭った魚を包むならば、その吉祥草でさえも悪臭を放つ。悪人に交りつき合う人々も同様である。
――『ダンマパダ』
■逐語訳(意訳を含む)
- たとえ香り高く清らかな吉祥草(きっしょうそう)であっても、
- 臭う魚をその葉で包めば、その草さえも悪臭を帯びてしまう。
- それと同じく、悪しき人々と交わり親しむ者は、いかに善良であっても、
- その影響を受け、やがてその者も悪臭を放つようになる。
■用語解説
- 吉祥草(クサ):清浄さと神聖の象徴。仏教では供物として用いられることもあり、「清らかさ」の比喩として使われている。
- 魚の臭い:ここでは「悪徳・不浄・腐敗」の象徴。
- 包む:外的に接するというより、内面まで染まるような深い交わりを意味する。
- 悪人に交る:品性・行い・価値観が腐敗した人間と近しい関係になること。
- 悪臭を放つ:行動や価値観が濁り、周囲にも悪影響を与えるようになること。
■全体の現代語訳(まとめ)
清らかな存在であっても、悪しきものと深く関わることでその清らかさを失ってしまう。どんなに徳のある者であっても、腐敗した人物と関係を持ち続ければ、その人の影響を受け、やがては自らも悪しきものとなる。
人間の徳は孤立して保てるものではなく、関係性の中で養われ、また壊れていくものなのである。
■解釈と現代的意義
この章句は、「人は環境によって形づくられる」という、非常に実践的かつ心理的にも裏付けのある真理を示しています。どんなに人格を磨いてきた人でも、悪意や腐敗の影響力を持つ人物と関係を結べば、徐々にその価値観に染まっていく危険があるという警告です。
これは現代においても、仕事・交友・家庭を問わず非常に有効な教訓です。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
パートナー選定 | 信用に欠ける企業や人物と取引を続けることで、自社の評判や理念も損なわれる可能性がある。 |
組織文化の維持 | 一部の不誠実な言動や価値観が職場に放置されると、全体に腐敗が伝播し、健全な文化を蝕む。 |
人材管理 | 個々の社員の資質だけでなく、「誰と日常的に関わるか」がその人の成長や劣化を左右する。 |
自己管理 | 日常的に触れる情報・人間関係・言葉が、思考や行動を無意識のうちに形づくっていく。選択的な距離感が必要。 |
■心得まとめ(感興のことば)
「清き者も、悪と交われば香を失う」
いかに高貴な志を持っていても、悪しき影響に身をゆだねれば、やがて心も濁る。
人は環境と交わりの中で、少しずつ形づくられていく。
だからこそ、誰と交わるかを選ぶことは、己の徳を守るための第一歩である。
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